政府は7月28日までに、地方自治体などが提案した地域再生プロジェクトを国が計画段階から総合的に支援する「地方の元気再生事業」の対象120件を決めた。4温泉(伊香保、四万、草津、みなかみ)の連携を図りながら、観光客の増加を目指す「“上州力”まるごと活用誘客・地元元気プロジェクト」(群馬県)など、観光関連事業が数多く選ばれている。
同事業は福田政権が掲げる地域格差是正政策の一環で、5月に地方自治体や民間団体などから公募していた。1186件の応募があり、その中から120件を選んだ。事業計画の策定に必要な専門家の派遣や社会実験などの事業費を国が全額交付する。
栃木県の日光市と福島県の南会津町、下郷町、会津若松市は「日光─会津観光軸元気再生プロジェクト」に取り組む。国は事業費として1千万円を交付。両地域にある観光資源を結ぶ「観光軸」を新たに形成し、一体的な観光周遊ルートを整備する。
4市町や鉄道会社、観光協会などから組織する協議会を近く設立。今年度は(1)メンバーによるプレ活性化実験(キャンペーンや商品販売)(2)戦略を練る合宿の実施(3)4首長によるサミット開催──などを予定している。
群馬県の4温泉が連携する上州力プロジェクトには2100万円が交付される。シルクやこんにゃく、りんごなど地元素材を活用したエステと、「それぞれの地産地消」をコンセプトにした新たな上州食メニューと体験観光を盛り込んだ4温泉の連泊ツアーのプログラムを構築する。「温泉を核にした健康滞在モデルを全国に発信する」(関係者)のが狙い。
来年度以降は、連泊プランの本格的な商品化を推進するとともに、参加旅館の拡大を図り、「新幹線で素通りしてきた旅行者の取り込みと受け入れ態勢を整備する」計画だ。
魅力的な観光素材が少ないといわれる埼玉県だが、秩父市では地質資源を中心とした自然環境資源や歴史・文化などを素材に、先駆的な取り組みとして、「秩父ジオパーク」を目指す。1500万円の交付金をもとに、今年度は散策コースを作り、このコースに伝統食(小昼飯)を盛り込んだツアーの実施や、環境学習や自然体験などができる「森のキャンパス」の構築、サイクルトレインといった新しいタイプの誘客方法──などを検討する。
このほか、伝統的な田舎暮らしのライフスタイルを提供し、新たな山村滞在型観光モデルを作る徳島県三好市の試みや、身体状況計測機器を活用する「IT湯治」の商品化を進め、健康保養滞在型の観光地づくりを目指す鹿児島県指宿市の事業などがある。