「委託費高額」の批判受け
新型コロナウイルスの経済対策として政府が1兆6794億円をかけて実施する旅行、飲食、イベントなどの需要喚起事業「Go Toキャンペーン」の開始が遅れそうだ。7月下旬にも始まる方向だったが、事務局機能を担う民間事業者への事務委託費の上限が3095億円だったことに野党などから高額だとの批判が集まり、事業者の公募が期間途中の5日に中止にされた。政府は事業の事務を一括して委託する手法を見直し、事業分野ごとに各省庁が事業者を公募、選定する方針を示している。
Go Toキャンペーン事業は、国土交通省(観光庁)が担う国内旅行費補助の「Go To Travel(トラベル)」(1兆3500億円)、飲食需要を喚起する農林水産省の「Go To Eat」、経済産業省によるイベントなどのチケット代補助の「Go To Event」、商店街振興の「Go To商店街」の各事業分野で構成される。
2020年度第1次補正予算に計上された事業で、キャンペーンの各事業分野の担当省庁は複数にまたがるが、予算上は経産省に一括計上されている。事業の事務を一括して委託する事業者の公募は5月26日に開始されたが、募集要領に示された委託費の上限額が議論を呼び、応募締め切りの6月8日を待たずに募集が中止された。
公募中止の理由と今後の対応について菅義偉官房長官は8日の会見で、「昨今の国会や国民の皆さまのご指摘を踏まえ、事務局の構造をより簡素にする必要があるとの判断から、いったん一括による公募をやめ、それぞれの事業を所管する省庁がこれまでの執行経験を踏まえ、事業分野に適した執行団体をそれぞれ選定することで事業の適切な実施を図ることにした」と説明した。
公募の中止に先立つ3日の衆院国土交通委員会では、Go Toキャンペーン事業に野党からの質問が集中した。委託費の上限設定について赤羽一嘉国交相は、過去に自然災害の復興で実施された旅行費補助「ふっこう割」などの予算に対する事務費率が13~23%だったことを説明し、Go Toキャンペーンで「上限額を18%ぐらいに想定したことは根拠がないわけではない」と説明した。
3日の衆院国土交通委員会では、当初予定されていた事業者選定の手法を経産省が説明した。事業者の提案書に基づく企画競争で、経産省に設置される第三者委員会の審査に基づき選定し、随意契約を行う予定だった。第三者委員会の委員は各事業分野の有識者6人を選任する予定で、内訳は観光2人、飲食2人、イベント1人、商店街1人だったという。
政府は、Go Toキャンペーン事業の予算額自体は減額しない方針だが、事業分野ごとに担当省庁が事務委託先の公募、選定を行う必要があるため、7月下旬にも見込まれていたキャンペーンの開始時期に影響が出そうだ。菅官房長官は8日の会見で、「事業開始が全体として遅れることは避けられないが、可能な限り早いタイミングで開始できるよう迅速に検討を進めたい」と述べた。
Go Toキャンペーン事業の委託費に関する問題は、8日の衆院本会議の代表質問でも取り上げられ、安倍晋三首相が「委託費の金額はあくまで上限であり、実際に要した費用以外が支払われることはない。事業目的に照らした効果が最大限発揮されるよう、それぞれの担当省庁において適切な執行に努めさせる」と答弁した。