文化審議会はこのほど、福井県あわら市のべにや旅館本館など、26府県の建造物171件を登録有形文化財に登録するよう、下村博文文部科学相に答申した。これにより、登録数は1万197件となる。
べにや旅館は本館のほか中央館、東館が文化財登録の対象となった。温泉街の中ほどに位置し、本館の1階は鉄筋コンクリート造りで、木造の2階には90畳の大広間を持つ。中央館、東館とも、各室の数寄屋意匠の床や天井などは部屋ごとに意匠を変えて趣向を凝らしている。
城崎温泉(兵庫県豊岡市)を代表するゆとうや旅館の詠帰亭・扶老亭、渡り廊下なども登録の対象となった。敷地内に平屋建ての詠帰亭と2階建ての扶老亭を雁行に配置し、いずれも内部は上質な座敷が並ぶ。また、徳島県吉野川市の村田旅館本館と蔵が対象に。四国山地の山間部に位置する店舗兼旅館で、本館は2階に高欄をまわすなど旅館らしい風情を醸し出しているという。
このほか、津軽の城下町に近代の彩りを添える青森県弘前市の市庁舎本館、モダニズム建築に今井兼次のデザイン趣向を融和させた千葉県大多喜町役場の中庁舎、楠正成の忠孝を伝える武徳殿風の会堂建築である大阪府島本町の町立歴史文化資料館などがある。