新しい旅のスタイル 内田高弘


安心安全が大前提、対応商品を

 新型コロナウイルスの影響で日常を取り巻く環境は大きく変わった。それは旅の仕方にも表れている。

 じゃらんリサーチセンターの「コロナ感染症の旅行市場への影響」調査では、国内旅行を検討する際の重要項目として「人の多いところは避けたい」が2020年5月の同設問の調査開始以来、常に1位となっている。21年9月調査では、2位が「感染症対策を十分にしているところを選びたい」となっており、前回調査から5ポイント増加している。

 こうした調査結果から、「旅や出掛ける先でもプライベート空間を確保しながら、安心して過ごせる場所を求める傾向にある」としている。

 コロナ禍で一度芽生えた「安心安全」を求める感情はそう簡単になくなりそうもない。安心して旅行をしようとすると、観光地や宿泊先のコロナ対策は大丈夫か、密にならない移動手段をどう確保するか…など、いろいろリサーチしなければならず、何かと面倒。その手間を省いてくれるのが安心安全を打ち出した旅行会社の商品や旅館・ホテルの宿泊プラン。アピール次第では消費者の関心を集めそうだ。

 コロナ禍はまた、働き方の多様化をもたらした。観光庁は「ワーケーションやブレジャーなどの仕事と休暇を組み合わせた滞在型旅行を、働き方改革とも合致した『新たな旅のスタイル』と位置付け、より多くの旅行機会の創出と旅行需要の平準化に向けて普及を促進する」としている。

 ワーケーションについては現在、さまざまな取り組みがみられるが、話題となったのが山形県とJR東日本が試みた「やまがたワーケーション新幹線」の運行だ。JR東によると、新幹線1編成全てをワーケーション用で運行するのは初めて。

 21年12月3日、上野発新庄行きリゾート新幹線「とれいゆつばさ」には90人ほどが乗車。Wi―Fiが完備された車内でリモートワークし、オンラインセミナーなども開催。合間には足湯やバーカウンターでくつろぐ姿も。乗客には好評で、2回目も望む声もあったが、とれいゆつばさは22年3月の引退が決まっており、今後の実施は未定だ。

 ワーケーションなどが果たして社会に根付くのかどうか定かではないが、無視するのもどうか。冷静な判断が求められる。22年はどんな旅の現象が起きるか、アンテナを高く上げ、情報収集を。

 

 
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