旅館の生産性向上取り組みに余地、旅館協会調査で判明


 日本旅館協会(針谷了会長)はこのほど、会員旅館・ホテルを対象に実施した生産性向上に関するアンケート調査の結果をまとめた。生産性向上に取り組んでいる施設は全体の約7割に達したが、約3割は取り組んでおらず、特に客室数が少ない施設では取り組みが進んでいないことが分かった。業務の効率化、省力化に向けてITや機械を導入している施設でも、さらに業務を改善できる可能性も見つかった。同協会では、現状や課題を踏まえ、業界全体の生産性向上への意識を向上させ、ノウハウを普及したい方針だ。

 アンケート調査は、日本旅館協会の労務委員会(山口敦史委員長)が実施。今年1月31日の締め切りまでに223軒から回答が寄せられた。

 「経営者として生産性向上に取り組んでいるか」の質問では、「熱心に取り組んでいる」が35%、「取り組んでいる(方策を練っている)」が36%、「重要だと思うが、取り組んでいない(取り組み方が分からない)」が28%、「重要だとは思わない。取り組んでいない」が1%だった。

 生産性向上に取り組んでいない割合は、客室数が30〜100室の施設で25%、30室未満の施設で36%に上るなど、小・中規模の施設での生産性向上のあり方が課題に挙がった。

 経営者主導の取り組みの一方で、従業員の提案による業務の改善活動については、「熱心に取り組んでいる」が29%、「取り組んでいるが、提案活動が少ない」が53%、「取り組んでいない」が16%だった。

 ITの活用についても聞いた。PMS(宿泊施設の予約・精算・顧客管理を担う基幹システム)や会計ソフトを導入している施設は多いが、手書きの書類と併用している施設が少なくなく、さらなる業務効率化の可能性があることが分かった。

 PMSと手書き予約台帳では「併用」が44%、「一部併用」が14%、「台帳は存在せず、PMSに直接入力」が23%、「PMSは使っていない」が18%。会計ソフトと手書き伝票(入金・振替伝票など)では、「手書き伝票を作成してから会計ソフトに入力」が49%、「直接会計ソフトに入力」が29%、「会計ソフトは使用していない」が10%、「税理士事務所に伝票入力を依頼」が10%だった。

 機械による省力化では食器洗浄機の使用法を聞いた。予備洗浄をしなくても食器に雑菌が残らないことを検査で実証し、省力化につなげた施設があることから予備洗浄に着目。「洗浄機にかける前にすべて予備洗浄する」が72%、「残飯だけを取ってすぐに洗浄機にかける」が10%、「落ちにくい物以外はすぐに洗浄機にかける」が12%、「洗浄機は使用していない」が6%だった。

 日本旅館協会では、規模別に旅館・ホテル8軒を選定したモデル事業を行うなど生産性向上への施策を強化。労務委員会の山口委員長は「施設の規模を問わず取り組むべき。小規模な施設では手が付けられていない所もあるが、その分改善の余地は大きいはず。無駄を排除すれば、空いた時間で付加価値の高いサービスを提供できる。業界全体の意識の底上げを図っていきたい」と話す。

 アンケート調査では生産性向上への取り組み事例も聞いた。従業員のマルチタスク(多能工化)や業務の標準化、シフト管理の徹底などが多く挙げられた。主な内容は次の通り。

 人時生産性を確認し、効率良く人員を配置(北海道)▽スマートフォンによる配膳システムの構築(山形県)▽マルチタスク、接客による満足度の向上、従業員満足度の向上(新潟県)▽バックヤードの「5S」「3定」の推進、オペレーションの標準化(石川県)▽厨房の食器位置の改善、作業動線の再確認(京都府)▽若手社員の意見を取り入れる向上会議の設置(千葉県)▽改善カードの提出と優秀者の表彰(大阪府)

 
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