本来20年以上の寿命があるが、旅館・ホテルでは約7年使用した後は廃棄されることが一般的だったタイルカーペット。近年のSDGsをはじめとする環境意識の高まりを受け、この使用済みタイルカーペットをきれいに洗浄し、再利用する動きが旅館・ホテルで広がっている。
この工法を提案しているのが大正クエストのグループ会社、ディーセントワーク(東京都世田谷区)だ。サービス名は、「タイルカーペットリユースシステム」という。「独自の洗浄手法でタイルカーペットを延命し、コストダウンと環境負荷の低減を実現する」と同社リユース事業部長の中山俊明氏は話す。
そもそも、今までタイルカーペットを再利用できなかったのはなぜか。カーペットの断面図を見るとダートポケットと呼ばれる箇所があり、このポケットが汚れをキャッチし、蓄え、ゴミ箱のような働きをする。このゴミを取り除くためにバキュームなどの清掃を行うが、タイルカーペットには通気性がほとんどないため、掃除機で吸っても汚れが回収できず最終的に破棄するしかなかったとされる。
同社のタイルカーペットリユースシステムの流れはこうだ。(1)汚れたカーペットを1枚ずつ剥がす(2)特殊洗浄剤に約10分間浸け込む(3)独自開発の洗浄機にカーペットを通し、汚れを洗い流し、脱水(4)きれいになったカーペットをもとの場所に戻す。
東京都港区にあるソフトバンク本社ビルの1フロア2700平方メートルにこのリユースシステムを施した。新品に張り替える場合、1平方メートルあたり6千円と見積もられていたが、このシステムを採用したところ同2500円で施工できた(現在の販売価格は1平方メートルあたり3500円)。
すべて新品に張り替えた場合、1800万円が必要とされていたが、700万円で施工が完了。大幅なコスト削減に成功し、1100万円が節約できた。また、二酸化炭素(CO2)の削減効果は25トン。廃棄物は14トン削減した。
宿泊施設でも導入が進む。某有名ラグジュアリーホテルやビジネス、旅館のチェーン店などで導入されている。宿泊施設にこの洗浄機本体と、バキュームユニットを直接搬入し、作業を行う。同社では1日の作業で約100平方メートルのカーペットを洗浄できるとしている。
使用済みタイルカーペットを独自開発の洗浄機に通す様子