日本政策金融公庫はこのほど、ホテル・旅館など生活衛生関係営業を対象に、価格動向と顧客の消費動向に関する調査を行った。仕入れ価格が上昇した事業者割合は、ホテル・旅館業で74.1%と、9業種の中で3番目に高い数字だった。仕入れ価格の上昇分を販売価格に転嫁したかどうかでは、ホテル・旅館業で「転嫁率50%未満」が77.0%と約8割を占めた。「仕入れ価格が上昇するも、価格転嫁が進まない状況がうかがえる」と同公庫。
仕入れ価格が上昇した事業者割合は全業種で60.9%。前年調査(71.1%)から10.2ポイント減と、4年ぶりに減少した。ただ、2010年の29.7%、2012年の37.4%に比べると、依然として高水準にある。
業種別では、食肉・食鳥肉販売業(89.0%)、飲食業(78.1%)、ホテル・旅館業(74.1%)の順に高い。
今後1年間の仕入れ価格の見通しは、53.6%が「上昇する」、43.6%が「変わらない」、2.8%が「低下する」と回答している。
仕入れ価格上昇の経営への影響について、「ある程度影響がある」が52.0%、「かなり影響がある」が24.1%。この二つを合わせた76.1%が「影響がある」とした。このほか「影響はない」は6.0%、「どちらともいえない」は14.8%にとどまった。
ホテル・旅館業からは「天候不順が続き、青果や鮮魚を中心に原材料価格が上昇し利益を圧迫した」「食材を中心とした原価上昇が利益に影響を及ぼしている。アメニティ等の物品も仕入れ原価は上昇傾向、旅行会社等の送客手数料も上昇が予想される」と回答している。
仕入れ価格上昇への対策は(複数回答)、「諸経費(人件費、光熱費等)の削減」(45.6%)、「仕入れ先の変更」(30.8%)、「販売価格への転嫁」(24.9%)、「販路の拡大」(13.1%)、「不採算部門の整理.縮小」(11.4%)の順で多い。
ホテル・旅館業からは「複数の仕入れ業者から見積書を取り寄せる。メニューの見直しや価格調整をこまめに行う」と回答があった。
仕入れ価格上昇分の販売価格への転嫁率は、「全く転嫁できていない(0%)」が29.8%、「ほとんど転嫁できていない(20%未満)」が33.3%、「多少転嫁できている(20%以上50%未満)」が17.0%。これらを合わせた「転嫁率50%未満」が80.1%を占めている。
転嫁率50%未満の業種別回答割合は、公衆浴場業(91.2%)、クリーニング業(86.2%)、飲食業(82.7%)の順で高い。ホテル・旅館業は「0%」が23.8%、「20%未満」が38.1%、「20%以上50%未満」が15.1%。合わせて77.0%が転嫁率50%未満だった。
販売価格の動向は、「引き上げた」が19.1%、「据え置いた」が78.8%、「引き下げた」が2.1%。このうちホテル・旅館業は、26.5%が「引き上げた」、73.5%が「据え置いた」と回答し、「引き下げた」とした回答はなかった。
「引き上げた」の回答割合は、業種別では食肉・食鳥肉販売業(69.0%)、ホテル・旅館業、飲食業(20.6%)の順で高い。
販売価格引き上げの理由は、「従来、無償で対応していたサービスについて、質の向上を図り有料オプションサービスとした」「外国人に対応するため料金体系を見直した。また、付加価値を向上させるため、大浴場の改修や全館無料Wi—Fiの設置などの設備投資や社員教育セミナーの実施、リネンやアメニティの見直しを行った」などと回答している。
調査は「生活衛生関係営業の景気動向等調査」(7〜9月期)の特別調査として実施。全国の生活衛生関係営業3220企業に行い、3054企業が回答。このうちホテル・旅館業は170企業が回答した。