日本旅館協会(針谷了会長)が実施している客室販売支援事業「オープン・ウェブ」の販売実績が販路の拡大に伴って伸びている。今年1月にビッグローブの旅行サイトが販路に加わって以降、販売額が増加した。今年4〜6月は前年同期比で5割を超える伸び率。7月にはセブン&アイ・ホールディングスと提携し、旅行サイト「セブン旅net」への提供もスタートさせた。
2012年4月に稼働を開始したオープン・ウェブは、旅館が自社の予約エンジンに登録している宿泊プランを協会のサーバーを通じ、販路の宿泊予約サイトなどに提供する仕組み。旅館の支払う手数料率(システム使用料率)は、主要ネットエージェントを下回る5%に抑えている。
販路は、ビッグローブ、セブン&アイ・ホールディングスのほか、エボラブルアジア、エイチ・アイ・エス(HIS)、トラベルコちゃん、ベネフィットワンなどが運営する旅行サイト。各社の宿泊予約横断検索サイトなどに旅館の直販プランが表示される。
販売実績は、初年度の12年度には約2794万2千円だったが、14年度には約4632万8千円に増加した。ビッグローブへの提供開始など販路の拡大に伴って、今年度には入ってからは、4月が34.2%増、5月が73.6%増、6月が34.5%増で推移している。
オープン・ウェブ事業を担当する日本旅館協会IT戦略委員会の佐々木圭副委員長は「横断検索サイトには、ネットエージェントなどに提供している自社プランに加え、自社の公式ホームページなどで販売しているプランが表示でき、同じ土俵で消費者に選んでもらえる。今後も販路を拡大し販売を伸ばしたい」と話す。
オープン・ウェブに接続している会員旅館は現在、約250軒。予約エンジンに予約プロ、リザーブゲート、宿シス、ヤドバンス、予約番、てなわんを使っている旅館であれば、通常登録しているプランを加工することなく活用でき、すぐに接続が可能。旅館協会では、支部ごとに開催するセミナーなどの機会を通じて会員旅館に接続を呼びかける。
オープン・ウェブ事業化の背景には、宿泊予約における大手ネットエージェントの寡占化への懸念があると見られる。販売を特定のネットエージェントに依存すると、手数料率の引き上げなどの条件変更も受け入れざるを得ない。旅館業界自ら多様な販路を確保し、宿泊需要を拡大する試みとして注目される。