日本修学旅行協会は8月25日、「第11回教育旅行シンポジウム」を東京都墨田区の江戸東京博物館で開催した。パネルディスカッションでは、今回のテーマである「課題解決学習に役立つ教育旅行をいかに作り上げ推進するか」について、竹内秀一理事長がコーディネーターとなり、学校と受け入れ先の関係者が活発に議論を繰り広げた。
新しい学習指導要領の柱の一つになると見込まれるのが「アクティブ・ラーニング」、すなわち、課題解決型の学習だ。パネルディスカッションで東京都多摩市立東愛宕中学校の千葉正法校長は「一番力を入れているのは、子どもたちに課題を発見させる発見力を付けること」と強調。愛知県江南市立北部中学校の松浦明伸校長は「話し合い活動の中で周りの友だちと協働しながら課題を解決していく力を子どもたちに付けたい」と語った。
「私たちは農家でなかなか知識を教えることはできないが、経験を生徒に伝えることはできる。生徒が自分でいろいろなことを考える機会になれば最高だ」と、農家民泊を行う宮崎県北きりしま田舎物語推進協議会の冨満哲夫会長。農業・酪農体験を受け入れる北海道別海町グリーンツーリズムネットワークの押田栄司事務局長は、「今、TPPなど農業関係には大きな問題があるが、それを少し話すだけで生徒には何か感じるものがある。あまり理屈を話すよりも、体を通して学ぶ必要性を強く感じている」と言う。京都府舞鶴引揚記念館の山下美晴館長は「平和を守っていきたい。今の歴史を知って次を考えるのに役立つ施設にしたい」と述べた。
修学旅行の行き先の選定に関しては東京都立小石川中等教育学校の中家健主幹教諭が「今まではどちらかというと、新幹線の便がいい、空港から近い、というような周遊に便利なところが主だった」と示し、「今後はアプローチの長さをいとわないだけの課題解決型学習のコンテンツがあれば、その地域に行くのではないか」と予見した。
終わりに竹内理事長は「生徒自らが設定した課題について、体験を通してさらに深く考えられるプログラムを作っていく。そのためには、学校の考えを明らかにしたうえで、学校と受け入れ地、その間に立つ旅行エージェントの三者が計画段階から緊密な連携をとることが大切だ」とまとめた。
パネル討論の様子