日本商工会議所はこのほど、「2021年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を政府や自民党などに提出した。新型コロナウイルスの影響の長期化を踏まえ、中小企業の事業継続支援とコロナ禍の先を見据えた地方創生の推進などを求めた。
意見・要望書は「コロナの影響で中小企業の事業継続と雇用維持の努力は限界に達しつつある」と指摘。このまま感染拡大が続き、再度の全国規模の緊急事態宣言が出されれば「倒産・廃業が急増し、経済の崩壊を招きかねない」と訴えた。
その上で、地域経済や雇用を支える中小企業経営者が事業継続に希望を持つことができるよう、「一層の支援策を迅速かつ継続して行うことが極めて重要」と主張した。
事業継続支援と地方創生を推進するため、(1)新しい生活様式に対応するためのデジタル活用や規制緩和によるビジネスイノベーション支援(2)企業や労働者の地方分散の推進―を重点要望項目として挙げた。
(2)については、勤務地を制限しないリモートオフィスの環境整備や、テレワーク定着を促す地方のサテライトオフィスの整備に対する交付金の活用推進などを挙げた。
コロナ禍で大きな打撃を受けている観光産業だが、持続的な展開ができるよう、(1)安全・安心対策の強化とその見える化(2)地域における観光戦略の見直しと弾力的な需要喚起策の展開(3)観光客の地方分散、および需要の変化に対応した事業投資―について支援を求めた。
具体的には、コロナ禍でアドベンチャーツーリズムなど新たな需要が高まっていることを踏まえ、豊かな自然や古民家などの地域資源を生かした観光コンテンツの開発に対して支援を要請。また、旅行消費の8割を占める国内旅行の本格的な需要回復期に向けた全国的な地域プロモーションの支援、将来的な誘客のための疑似観光を体験させるネットやVR(仮想現実)の活用推進への支援も求めた。
(3)の中では、地域の宿泊業と飲食業が一体となって進める泊食分離の実施や、ルームチャージ制への転換、大部屋の分割個室化を進めるための投資に対する補助、税制支援にも触れた。
中小企業庁の奈須野太次長(左)に意見・要望書を手渡す日商中小企業委員長の西村貞一氏=日商HPから