社会経済生産性本部はこのほど、日本人の旅に関するアンケート調査の結果を発表した。国内旅行では、一度の旅行でたくさんの場所を訪れたい“回遊派”より、同じ地域でのんびりしたい“滞在派”が多数を占める結果が出た。年齢層別にみても幅広い世代が滞在型旅行に高い関心を持っていることが分かった。国内宿泊旅行の活性化が課題となる中、観光事業者や観光地には、滞在型旅行の潜在的なニーズを取り込む商品づくり、地域づくりが求められている。
アンケート調査は昨年8月、ヤフーリサーチによるウェブ調査で実施。対象は20歳以上の男女2410人で、1090人から有効回答を得た。
国内旅行のスタイルについて、滞在志向か、回遊志向か、二者択一で聞いた質問では、「どちらかと言えば、同じ地域にのんびり滞在するような旅がしたい」が75.2%と全体の約4分の3を占めた。一方の「どちらかと言えば、一度にできるだけたくさんの場所を訪れるような旅がしたい」は24.8%だった。
滞在派は、性別でみると、男性77.7%、女性72.9%を占めた。年齢別では、50代で82.4%に達したほか、60代以上75.5%、40代75.3%、30代73.5%、20代でも68.8%に上るなど、あらゆる年代で高い割合を示した。年収別でも、300万円未満の層以外は、いずれも70%を超えている。
特に50歳代で滞在志向が強いことについて、「大量定年退職を迎えている『団塊世代』で滞在型旅行への関心が高まっている。時間的ゆとりがあり、旅行経験も豊富な団塊世代が、本格的な滞在型旅行の時代の突破口を開くことが期待される」(同本部・余暇創研)。
国内の宿泊観光旅行は、国民1人当たりの年間泊数が06年度で2.72泊(国土交通省の旅行・観光消費動向調査)、前年度の2.89泊から下降するなど、近年低迷しているが、こうした滞在型旅行へのニーズを捉えることで、滞在日数の拡大などが期待される。
アンケート調査では、国内旅行に求める価値観についても聞いた。その結果は、「有名観光地でなくても、新たな発見や交流、感動のできる所を訪れたい」とする回答(全回答者の59.9%)が、「名所旧跡や人気の温泉がある有名観光地を訪れたい」とする回答(同40.1%)を上回った。
同本部・余暇創研では「既存の有名観光地でも、ブランドや温泉だけに頼ってはいられない時代に。逆に、『発見』『感動』などがきちんと提供できれば、観光面で知名度の低い地域でも観光交流による地域活性化のチャンスは大きい」と指摘。注目を集めているニューツーリズムへのニーズも高いと言えそうだ。
“休暇肯定派”全体の9割に
社会経済生産性本部の日本人の旅に関するアンケート調査では、旅行需要と関連が深い休暇のあり方についても聞いた。06年の年次有給休暇取得率が過去最低の46.6%(厚生労働省調べ)となる中で、休暇の取得が経済の活性化につながると回答した“休暇肯定派”が9割を占めた。
二者択一の質問で、「みんながしっかり休んでこそ、日本経済は活力を取り戻す」との回答が88.4%を占めた。一方の「みんなが休みを取ればとるほど、日本経済は活力を失う」は11.6%にとどまった。