日本旅館協会の2020年度通常総会が17日、東京都港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイで開かれた。任期満了に伴う役員改選では、北原茂樹会長(京都府・旅館こうろ)が退任し、副会長・北海道支部連合会長を務めていた浜野浩二氏(北海道・佳松御苑)が新会長に選出された。審議事項では、新型コロナウイルスの流行で宿泊業の経営が厳しい環境にあることを踏まえ、20年度に限って会員の本部会費を免除する予算が承認された。
役員改選に向けては、3月の理事会で浜野氏を次期会長に推薦することが決定していた。選任後、通常総会であいさつした浜野会長は「日本旅館協会の存在を高め、会員が誇りをもってこの会の会員だと言えるようお役に立ちたい。多くの方々とよく議論をしながら、できるだけ問題と解決を共有し、皆さまと共に歩く協会になるよう努力する」と抱負を述べた。
浜野会長は、宿泊業の当面の課題に新型コロナへの対策を挙げた。政府、自治体による事業継続や雇用維持に向けた支援制度に関しては、旅行市場の回復が遅れた場合などには支援の継続を要請する必要性に言及。観光、宿泊の需要回復では、政府の日本人国内旅行の需要喚起事業「GoToトラベルキャンペーン」に期待した。一方でインバウンドについても「年間3千万、4千万人の訪日外国人を前提に観光地や施設が形づくられており、いかに戻すかが大きなテーマ」と指摘した。
役員改選では9人の副会長(支部連合会長)のうち7人が交代。金原貴(中部)、永山久徳(中国)の両氏は再任だが、大西雅之(北海道)、佐藤勘三郎(東北)、渡邊幾雄(関東)、松﨑陽充(北陸信越)、岡本厚(関西)、奥村敏仁(四国)、桑野和泉(九州)の各氏は新任となった。
会長退任のあいさつで北原氏は「問題が山積みの中、バトンタッチするのは心苦しいが、浜野さんにお引き受けいただいた。コロナの難局を乗り切れるよう、皆さまの倍旧のご支援を賜りたい。温かい激励の言葉をいただき、2年間務めさせていただいたことに御礼申し上げたい」と述べた。
20年度は会員の本部会費が全額免除される。本部予算とは別だが、各支部連合会の会費は現行の半額となる。本部予算は会費収入の減少などで単年度の事業活動収支は赤字だが、預金で埋め合わせる。新規事業では新型コロナウイルス対策事業に2千万円を計上し、各支部連合会の誘客事業などを支援する。
また、協会内に設置されている新型コロナウイルス対策本部では、本部長に浜野会長、副本部長に大西副会長、桑野副会長が就いた。テーマ別に事業を推進する委員会は、協会の規定や観光政策を担当する「政策委員会」、人材確保・育成や生産性向上を担う「労務・生産性向上委員会」、ITの活用やOTA対策、電子決済などを担当する「EC戦略・キャッシュレス委員会」の設置を決めた。
協会の4月1日時点の会員数は2439施設。新規加入数を退会数が上回り、前年同期比で89施設の減少となった。
通常総会の出席者は例年より少ない約70人。感染症対策の一環で、総会後の懇親会は開催しなかった。
新会長に選出された浜野氏(左)と、会長を退任した北原氏が記念撮影に応じ、握手を交わした