日本温泉協会(滝多賀男会長、約1700会員)は6月25日、神奈川県箱根町の湯本富士屋ホテルで今年度の会員総会を開いた。総会には中華民国温泉観光協会(台湾)の一行、約50人が出席、華を添えた。また、会員から地熱発電問題についての緊急提案があり、協会として対応していくことを決めた。
総会には約200会員が出席。冒頭あいさつした滝会長は来年迎える協会創立80周年について触れ、「国際温泉気候連合(FEMTEC)の総会や国際シンポジウムなどを開く。国のVJC事業に貢献するものであり、日本の温泉文化を世界に発信する機会としたい」と強調した。
綿抜邦彦学術部委員長は二酸化炭素(CO2)問題がクローズアップされている現状を踏まえ、「温泉は熱源として非常に貴重だ。資源としての温泉という認識を深め、どう生かしていくかが今後の温泉地の課題」と述べた。
来賓の山口昇士箱根町長は「昨年の観光客数は2026万人となり、10年ぶりに2千万人を超えた。06年9月の『健康都市宣言』を実効あるものにするため、温泉資源を生かす行政を進めたい」と抱負を語った。
今年度は、(1)創立80周年に向けて記念事業の準備に着手する(2)多方面に接点を求め、公益法人制度改革を踏まえた組織強化と財政の健全化を図る(3)天然温泉表示看板の普及とPRにまい進し、温泉の適正表示を社会に浸透させる──の3つを重点目標に掲げ、新入会員の拡充(20会員以上)、会員専用メールマガジンの創刊に向けた検討、温泉排水についての報告書作成などに取り組む。
創立80周年の記念事業については、来年11月に横浜市と箱根町でFEMTEC総会を開き、同月をめどに記念誌を刊行する計画だ。
総会では草津温泉の宮崎謹一常務理事が緊急提案を行った。同氏はCO2削減運動の高まりや最近の原油高などから、自治体や電力会社が地熱発電、特に地熱バイナリー発電に注目していることを懸念。「従来の地熱蒸気発電より低温度の熱水を利用できるため、今まで以上に発電可能な地域が多くなり、一層温泉地域は脅かされることになる」と指摘し、協会としての対応を求め、協会も地熱対策委員会で検討することを決めた。
総会ではまた、大野英市理事と大高秀三監事の死去に伴う役員の補充を行い、理事に遠藤淳一(福島県高湯温泉吾妻屋)、監事に金本敏男(公認会計士)の両氏をそれぞれ選任した。
滝会長に 記念皿贈呈 徐理事長
日本温泉協会の会員総会に出席した中華民国温泉観光協会理事長の徐亨氏は台湾の温泉事業について「(旅館経営や温泉開発などの)総売り上げは08年に322億元に達し、温泉に関する商品は300億元に達している」と述べるとともに、台湾温泉協会のロゴマークを刻んだ記念皿を滝会長に贈った。滝会長は箱根の伝統工芸品、木象嵌を贈った。
滝会長(左)と徐理事長