日本温泉協会(約1250会員)は6月26日、皆生温泉(鳥取県米子市)の皆生グランドホテル天水で2018年度会員総会を開き、18年度事業計画・予算案などを審議、原案通り承認した。任期満了に伴う役員改選では笹本森雄氏(個人会員)の会長就任を決めた。大山正雄会長(学術部委員長)は相談役に就いた。19年度総会は指宿温泉(鹿児島県指宿市)で開催する。
過去、山陰での総会開催は島根県で2回開かれているが、鳥取県は初めて。約100人が出席した。
第1部の式典で歓迎のあいさつをした伊木隆司米子市長は、「ここ皆生は海辺に源泉を持っており、お湯に若干の塩水が混じっている。そのため、保湿・保温性を高める効果がある」と皆生温泉の特徴を紹介。「私は皆生出身で、ここは遊び場だった。遊んだ後、温泉に浸かるのが楽しみだった」と振り返った。
来賓の山本麻衣・環境省温泉地保護利用推進室長は、省の施策「新・湯治」を説明し、「皆さんの協力が不可欠であり、助言を得ながら進めていきたい」と述べ、理解を求めた。
永年勤続役員会長表彰では遠藤淳一氏(福島県高湯温泉吾妻屋館主)、金本敏男氏(公認会計士金本敏男事務所長)を表彰した。
第2部では笹本氏が議長となり、議事を進行した。18年度については、(1)会員メリットの創出による会員の増強(会員特典の検討)(2)会費以外の事業収入を図り財政再建(温泉協会会員証や温泉セミナーの実施)(3)温泉検定実施による社会的認知度の向上(4)機関誌「温泉」の充実による会員の親睦―を重点目標として推進することを決めた。
(3)の温泉検定については、名称を「日本温泉名人検定(略称「温泉検定」)とし、基礎的な知識を問う初級試験の実施を創立90周年記念事業として、来年12月に実施する予定だ。
また、現在の天然温泉表示看板に代わる、温泉表示を重視した新看板については、会員証看板と温泉の利用法(加水、加温、循環、ろ過、消毒剤の使用の有無)、1日あたりの浴槽温泉給湯量、浴槽予定人員などを表示した掲示額を検討する方向で議論が進められている。
質疑応答では、壇上に掲げられたスローガンなどを巡り活発な意見が出た。昨年まで「無秩序な地熱開発反対」だったのが、今総会では「秩序ある地熱開発で温泉を守ろう」に変更、これに対して協会の姿勢を問う意見があった。本部は反対の反対を避け、現実を見据えた対応であることを説明、理解を求めた。
個人会員の会費見直しも審議し、現在の1万2千円を1万円に引き下げ、19年度から適用することを決めた。
会長に選出された笹本氏は、日本旅館協会の発足や、全旅連が定款に「観光立国の実現推進」を追加するなど二つの組織が大きな変化を遂げたことなどを挙げ「温泉協会も変わっていかなければならない」と指摘。ただ、「それには緩め、遊びがあった方がいい」と持論を展開。その上で「温泉のことはあいつ(温泉協会)に任せておけばいいと言われるぐらい、温泉を楽しむ協会になってもらいたい」と期待した。
議事の後、とっとりコンベンションビューローの石村隆男氏が「鳥取県の温泉と観光」をテーマに記念講演した。なお、鹿児島県での総会開催は初めて。創立90周年の記念総会となる。
役員改選に伴う、笹本会長以外の新任役員は次の通り(カッコ内は所属、敬称略)。
常務副会長=岡村興太郎(群馬県法師温泉)▽副会長=佐藤好億(福島県二岐温泉)、広川登美子(栃木県那須温泉郷)、石村隆生(神奈川県箱根温泉郷)、前田真治(学術部幹事委員)▽常務理事=高野光司(公益財団法人日本交通公社)、遠藤淳一(福島県高湯温泉)、立見修司(熱海市役所)、坂内和孝(鳥取県・皆生温泉観光会社)▽理事=佐藤元昭(静岡県熱海温泉)
総会には約100人が出席(中央は伊木米子市長)
就任の抱負を述べる笹本会長