日観振が旅行会社向け研修 東広島の観光復興支援


酒蔵のまちを歩く参加者

銘醸地・西条を視察 商品造成働きかけ

 地震や大雨などで被災した地域の復興支援に取り組んでいる日本観光振興協会。2018年度の被災地復興支援事業として、広島県のほぼ中央に位置する東広島市を選び、2日、旅行会社を対象に研修を実施した。同市の観光魅力を知ってもらい、商品造成に生かしてもらうのが狙いだ。現地で行われた研修を同行取材した。

 18年7月上旬の西日本豪雨による土砂災害などで12人が亡くなり、いまだ1人が行方不明という東広島市。「過去に経験したことがない記録的な大雨」(市関係者)は各所で甚大な被害をもたらした。市は現在、策定した「災害復旧・復興プラン」に基づき、早期の復旧・復興に努めている。

 「かもしだす 東広島の魅力発信・旅行会社向け研修」にはJTBや近畿日本ツーリスト中国四国、クラブツーリズム、日本旅行、東武トップツアーズ、農協観光、阪急交通社などが参加。

 研修場所は市の中心部、西条。JR広島駅から山陽本線で約40分、広島空港からリムジンバスで約25分という位置だ。兵庫の灘、京都の伏見と並ぶ三大銘醸地の一つで、「賀茂鶴」や「白牡丹」「福美人」といった名だたる酒造メーカーが建ち並ぶ。

 JR西条駅前にはこれら7軒の蔵元が軒を連ねており、地元のボランティアガイドによると「7軒の酒蔵を歩いて回れるのは全国でここだけ」。酒蔵の景色は「日本の20世紀遺産20選」に「西条の酒造施設群」として選定されており、赤れんがの煙突はまちのシンボルとなっている。

 当日は「春の西条醸華町(じょうかまち)まつり」の日とあって、大勢の人でにぎわっていた。各蔵の酒が飲め、日ごろは見ることのできない蔵見学もできる。また、毎年10月に実施される「酒まつり」は全国から美酒の集まる祭典で、2日間で20万人を超える人が集まる。酒文化を通したにぎわいづくりに取り組んでいるのが特徴だ。

 最近では映画「恋のしずく」(主演・川栄李奈)の舞台ともなり、映画は第9回ロケーションジャパン大賞で審査員特別賞を受賞した。参加者の1人は「もっとアピールすれば集客増につながるのでは」と話していた。

 昼食は名物料理の「美酒鍋」。もともとは蔵人たちのまかない料理で、豚肉や鶏肉、野菜類を塩とこしょうと日本酒だけで味付けするシンプル料理。アルコール分は抜けるので、子どもや酒が苦手な人でも大丈夫。「酒をたっぷり入れるのもどうかと思ったが、あっさりしてとてもおいしい」と参加者にも好評だった。

 東広島芸術文化ホールくららでは県や市によるプレゼンテーションが行われた。

 主催者あいさつした日観振の丸山裕司審議役は「市は(日観振が事務局となって推進している)酒蔵ツーリズムに積極的に関わっている。(研修で)市の魅力を再発見し、商品造成と情報発信をお願いしたい」と期待を込めた。全日本空輸やJR西日本、日本航空の関係者が来賓出席した。

 プレゼンでは「ひろしま、宝しまレディ」の3人が宮島や尾道、福山など県の魅力を紹介。また、JRグループと自治体などが協力して展開する大型観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン(DC)」が20年10~12月、広島県を中心とした「せとうちエリア」で実施されることをアピールした。

 東広島市の多田稔副市長は復旧・復興に向け懸命に取り組んでいる中で、研修は「地域活性の機会になる」と歓迎の言葉を述べるとともに、市の観光資源である酒蔵を生かしたツーリズムの推進に意欲を示した。参加者の1人は「酒蔵の光景は独特な景観であり、観光コースの一つになる」と述べた。

酒蔵のまちを歩く参加者

広島県や東広島市のプレゼンに耳を傾ける参加者ら

西条のシンボル、酒蔵の赤れんが煙突

 
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