タイトルは「よくわかる旅行業界」となっているが、実際の中身は、「とてもよく分かる観光業界」だ。ここまで書いて大丈夫か、と心配してしまうほど、観光業界、とくに旅行業界を丸裸にしてしまっている。
業界の歴史と現状の表面をなぞるだけのありきたりな業界研究本とは一線を画する内容。大手旅行会社の問題点、大型観光旅館の問題点、ネットエージェントの台頭などについて冷徹に観察、記述している。
すべてをオープンにしたうえで、「観光産業は21世紀の経済を牽引する基幹産業」(95年、観光政策審議会の提言前文から)の文言を挙げ、観光業界の将来展望と可能性についても示唆している。
旅行業界、観光業界について一通りの知識を持っていると自負する方に特に一読を勧めたい。新しい発見、気付きがあるはずだ。
著者は日本旅行、日本旅行業協会を経て、現在コンサルティング専門旅行会社、ブルーム・アンド・グロウ社長の橋本亮一氏。神戸女子大学、NHK文化センター、大阪学院大学エクステンションセンターの講師も務める。
日本実業出版社刊。定価1365円(税込)。四六判並製、256ページ。9月1日発行。