モノづくりとともに新市場開拓の努力を行ってきたサムスン・エレクトロニクス。「世界トップクラスといわれる総合家電企業の地位を築いた」(同書)サムスンのマーケティング戦略を例に、モノづくり大国日本が唯一忘れていた「市場づくり」の大切さを改めて説く。
金融不況により日本製品の大量消費国だったアメリカを失った今、日本企業は世界を相手にどう戦うべきか。日本流のグローバル・マーケティングに大きな異議を唱え、具体的な戦略を公開している。
マス(大衆)がより一層安い商品を探し始めているのに「日本は未だに価値を生み出そうとしている」と警告を発する。「だれに売るのかも考えずに『良い品物を造れば大量に売れる』と信じきっていることが日本企業の大問題」と著者。人が多い国だからたくさんのモノが売れる、という発想ではなく、高い技術力を高く買ってくれる人を世界中から探し出すことが重要だと主張する。
過去にサムスンが「新たな市場づくり」を行ってきたように、高価な日本製品を販売できる市場を作ることから始めなければ「日本企業に未来はない」とまで言い切る。
著者はマーケティング会社を経営。サムスンとともに日本企業の手薄だったBRICSなどの新興地域で市場づくりに取り組んだ。
309ページ、定価1500円。しょういんから出版されている。