押しも押されもせぬ観光地の由布院。この湯布院の町づくりに、人と人をつないで取り組んだのが、現在の由布院玉の湯会長、溝口薫平氏だった。同書は溝口氏の生い立ちと町づくり、宿づくりの軌跡を、西日本新聞社記者の野口氏が聞き書きしてまとめたもの。
今では「にっぽんの温泉100選(観光経済新聞社主催)で、由布院は常に上位にランキングされ、人気温泉旅館・ホテル250選にも由布院から6軒も選ばれる」(同書)など旅行業界からも高い支持を受けるが、団体旅行ブームだった昭和40年頃は「部屋数も少なくおよびでない時代だった」と振り返る。
溝口氏は旅館の若社長らと連携して全国に名前を売り込む作戦を展開。町づくりを進めるなかで町内の意見対立、開発の危機などさまざまな困難に直面したが、そのたびに知恵を出し合い、人と人をつないで乗り越え、前進を止めなかった。
オリジナルで面白いものにマスコミが飛びつくこと、良い情報は田舎からも発信できることを学び、「ゆふいん音楽祭」や「湯布院映画祭」など由布院の自然や手作りのおもてなしに触れられるイベントを実施。大きな実を結んだ。
共に町づくりに取り組んだ亀の井別荘主人の中谷健太郎氏は、「薫平さんがいなかったら由布院の町づくりは違った展開になっていたでしょう」と評する。
価格は1400円。問い合わせは西日本新聞社(TEL092・711・5523)まで。