東北観光推進機構とJR東日本が主催する「観光で東北を元気にするシンポジウム」が4日、仙台国際センター(仙台市青葉区)で開かれた。東北6県の知事や推進機構の清野智会長(JR東日本会長)、観光庁の田村明比古長官らが出席し、東北の観光促進へ「オール東北」で取り組んでいくことで一致した。
シンポジウムは、北海道新幹線の開業や7月の仙台空港の完全民営化など、東北観光にとって起爆剤となる材料がそろいつつある中、東北観光復興元年のスタートとするため、観光関係団体や旅行会社のトップのほか、東北各地から約800人が一堂に会した。
主催者を代表してあいさつした清野会長は「東北一体となったPRが不足している。キーワードは連携だ」と述べ、海外のプロモーションなどは東北全体をまとめアピールすべきだと指摘するとともに、15年に6県と新潟県で60万人程度だった外国人観光客の延べ宿泊者数を、16年には100万人とする目標を示した。また、広域観光周遊ルート「日本の奥の院・東北探訪ルート」については現在モデルコースを策定中で、「間もなく発表できる」とした。
来賓代表の田村長官は、海外からの観光客を増やすには(1)観光客目線による資源の磨き上げ(2)業界の生産性向上(3)ストレスフリーの滞在型環境作り—が必要と述べ、取り組みを求めた。
トークセッションでは6県のデスティネーションキャンペーン(DC)で活躍した地域の観光関係者が活動を報告。やまがたさくらんぼファーム代表の矢萩美智さんは「リスクがあっても新しいことにチャレンジしなければ同じ結果しか生まれない。広域で協力してPRすることが大事だ」などと強調した。
パネルディスカッションでは三村申吾・青森、達増拓也・岩手、村井嘉浩・宮城、佐竹敬久・秋田、吉村美栄子・山形、内堀雅雄・福島の知事6人が参加し、東北の観光振興で持論を述べた。
佐竹知事は交通について「横軸が弱く、移動するのに効率が悪い」と指摘。東北の認知度の低さに加え、民泊でのクレジットカードや外貨決済、Wi—Fiの環境についても改善が必要と訴えた。内堀知事は「東北のインバウンドが伸びないのは原子力災害がある」とした上で、今後は「ホープツーリズム(希望の観光)を打ち出し、福島、東北が前進していることを発信する」と意欲を示した。特に県については日本酒を核にアピールする考えを示した。
吉村知事は昨年3月策定した「おもてなし山形県観光計画」の着実な実行を挙げ、海外へのトップセールス、雪の戦略的な活用などに取り組むとした。達増知事は18年に宮古—室蘭間に初のフェリー航路が開設されるのを受け、海のルートを活用した集客に意欲を示した。三村知事は新幹線など交通網の整備を機に、航空便と新幹線を活用した「立体観光」促進を力説した。
村井知事は海外向け観光PRでトップセールスの重要性を指摘、「海外に行って何かやる時は最優先しよう」と呼びかけ、6知事そろっての活動に期待した。
出席者の1人は「外客増などで観光にスポットが当たっている今がチャンス。6県バラバラでなく、まとまっての活動を実行に移すべきだ」と述べた。
観光振興に向け、ガッツポーズで気勢を上げる東北6県の知事ら