松山市の観光振興施策 松山市・野志克仁市長に聞く


松山市・野志克仁市長に

道後温泉本館が全館営業再開 地域の観光魅力をさらに磨く

 ――道後温泉本館が7月11日に営業を再開した。オープン直後の現在の心境。

 「明治27年、道後湯之町初代町長・伊佐庭如矢さんが、道後温泉本館を『100年の後までも、よそがまねできないものを』との熱い思いで改築してから、今年4月10日に130周年を迎えました」

 「この松山の大切な宝を次の世代に引き継ぐため、平成31年1月から、国の重要文化財の公衆浴場では全国で初めて、営業しながら保存修理工事を開始しました。工事は順調に進み、当初の予定より約半年早く、今年7月11日に全館での営業を再開できました。待ちに待った、5年半ぶりの全館営業です。地元の皆さん、工事施工者の皆さん、多くの関係者の方々のお力添えがなければ、ここまで来ることはできなかったと思います。心から感謝を申し上げます」

 「この工事期間中に全世界がコロナに見舞われました。その影響で、本館も営業停止を余儀なくされ、開けられるのが当たり前ではないと痛切に感じました」

 「100年に一度の大修理が終わり、全館営業を再開できました。『開けられる』という初心を大事にしながら、良いおもてなしを積み重ねていけば、この地域はさらに100年輝き続けることができると私は信じています。四国八十八カ所で培った良いおもてなしを皆さんと一緒に積み重ね、保存修理工事前の景観や風情を受け継ぎながら、さらに魅力に磨きをかけていきます」

 ――道後温泉と松山市全体の観光魅力について。

 「道後温泉は、約3千年の歴史を誇り、伊予國風土記逸文や古事記、日本書紀にも登場し、日本最古の温泉といわれています」

 「そのシンボル、『道後温泉本館』は、日本で唯一、皇室専用の浴室『又新殿』を有し、歴史的・文化的価値から、国内外で高い評価を受けています。また加水加温をしていない源泉100%のかけ流しで、泉質はアルカリ性単純泉の美人の湯です」

 「愛媛の伝統工芸と最先端のアートが融合した、『道後温泉別館 飛鳥乃湯泉』と地元で愛され続ける『道後温泉 椿の湯』の三つの湯でお待ちしています」

 「また、夏目漱石の『坊っちゃん』、司馬遼太郎の『坂の上の雲』の舞台になるなど文学的土壌が豊かで、俳句をはじめ『ことば文化』など多くの宝があります。俳人正岡子規の記念博物館常設展を7年ぶりにリニューアルしたほか、市内中心に、江戸期から現存する12天守の一つ松山城があります」

 「空港から市街まで車で15分、全国18都市しかない路面電車が街をつなぎ、交通の利便性が高く、主要施設が中心部に集積しています」

 ――松山市のさらなる観光振興に向けた今後の取り組みについて。

 「広域観光戦略『瀬戸内・松山構想』を軸に、瀬戸内海の魅力を最大限に引き出しながら、地域資源を組み合わせて旅行商品を造成し、ファムツアーや商談会でプロモーションしています。鉄道や航路のほか、空路の交通事業者とも連携し、関西地域と新たに九州地域をターゲットに加え、旅行市場で観光ルートが定着するよう目指しています」

 「また、松山空港を発着する国際定期路線で、ソウル線、釜山線、台北線が運航再開と増便や新規就航するなど本市へのインバウンド需要も高まっています」

 「そこで、大阪・関西万博を見据え、インバウンド向けの旅行商品造成、広島―松山間の航路運賃助成、SNSでの情報発信、航空会社と連携したプロモーションなどをしています。また、外国人観光客が多く訪問する広島や関西圏から誘客する体制を整え、さらに誘客を進めます」

 「修学旅行の誘致は、コロナ禍のマイクロツーリズムのニーズ増加を予測し、県内や近隣県へ営業強化や助成制度を拡大し、令和2年度から、3年連続で過去最高を更新しました。現在、特別支援学校など障がいのある児童・生徒の修学旅行の受け入れサポートを充実しており、障がい者や高齢者、子育て世代、外国人など、全ての人が安心して滞在できる観光都市づくりに発展させ、ユニバーサルツーリズムを推し進めます」

 「そのほか参加者の旅行消費単価が高く、経済波及効果が見込まれるMICEの誘致を、松山観光コンベンション協会と連携して進め、ビジネス機会の創出や都市ブランドの向上、交流人口の拡大など松山の魅力を高めていきます」

 ――弊紙読者の市内の観光事業者(主に旅館・ホテル経営者)、旅行者を送客する全国の旅行業者にメッセージを。

 「道後温泉本館の保存修理のピンチをチャンスと捉え、地元の観光事業者の皆さんや市民の皆さんに協力いただきながら、温泉という観光資源にアートを取り入れるなど、この期間ならではの魅力を発信してきました」

 「いよいよ道後温泉本館が全館営業を再開し、国の内外に松山をアピールする絶好の機会です。松山には道後温泉のほかにも、現存12天守の一つである松山城や島しょ部・山間部の自然を生かしたアクティビティ、お遍路さんで根付くおもてなし文化など、さまざまな観光資源があります。多くのお客さまにお越しいただけるよう、引き続き魅力に磨きをかけていきますので、松山への送客をよろしくお願いします」


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