楽天と岩手県釜石市は4日、「地域活性における連携協定」を結んだ。楽天グループがインバウンド需要の取り込みと決済インフラの整備を支援する。楽天はこれまでに全国26の自治体と包括連携協定を結んでいるが、インバウンドと決済サービスを含んだ包括連携協定の締結は初めて。
具体的に取り組む分野は、(1)キャッシュレス決済導入(2)外国人観光客に向けたPR、体験コンテンツの造成(3)民泊(4)ふるさと納税とネットショップの活用―の四つ。
キャッシュレス決済導入では、実店舗でのクレジットカードやスマートフォンでの決済を可能にする楽天グループの決済サービス「楽天ペイ」を市内の店舗などに導入する。手始めに商工会加盟の約200社とタクシー約60台に採用してもらう。楽天上級執行役員でカード&ペイメントカンパニーの中村晃一シニアヴァイスプレジデントは、「小型決済端末とスマートフォンをブルートゥースで接続してクレジットカードなどのキャッシュレス決済を可能にする仕組みだ。システム導入に向けては、楽天の仙台オフィスのスタッフが操作方法の説明など細かいサポートをさせていただく」と述べた。
外国人観光客に向けたPR、体験コンテンツの造成では、楽天子会社で訪日外国人旅行者向け体験予約サイトを手掛ける「Voyagin(ヴォヤジン)」(高橋理志社長)が、外国人目線で釜石市の魅力を再定義し、体験企画を造成。欧米豪の個人客をターゲットに同市の魅力を発信する。
民泊では、民泊予約サイト運営・民泊運営コンサルの「楽天ライフルステイ」(太田宗克社長)が、主に空き家を活用した民泊施設の開発、運営、集客を支援する。太田社長は「地域の雇用創出にも寄与できる」と民泊展開の意義を強調した。
ふるさと納税とネットショップの活用では、楽天グループの中核事業である「楽天市場」を活用。市内産品のPRと販路拡大、ふるさと納税を推進する。
釜石市は、ラグビーワールドカップ2019の開催地に決定しており、訪日外国人客の受け入れ環境を整備する必要がある。同日、東京都千代田区の都道府県会館で開いた記者会見で、同市の野田武則市長は「東日本大震災から7年が経過し、被災された方々の住まいの再建のめどがようやく立った。被災地復興後の地域活性化への努力もしていかなければならない」と語り、楽天との包括連携協定締結の背景を説明した。