楽天トラベルが「楽天アフィリエイト」を来年1月から本格導入し、全費用を契約宿泊施設の負担とする問題で、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長、山口敦史青年部長)は10月21日、撤回を求める要望書を同社に訪問の上、手渡した。全旅連は要望書の中で同社との協議を提案。同社はこれを了解し、同31日、全旅連本部で解決に向けた話し合いが開かれる。
全旅連は要望書の中で「『楽天アフィリエイト新システム』の問題点」として五つを挙げ、協議の必要性を訴えた。(1)全てのアフィリエイトバナー報酬を施設が負担することの正当性、合理性の欠如(2)システム利用料(30%)徴収についての正当性、合理性の欠如(3)優越的な地位を利用した強制的な契約であり、施設に選択権がないこと(4)支払いが増大するリスクの存在(5)アフィリエイト広告の判定期間が30日間と極めて長いこと—。
特に(1)では、楽天アフィリエイト広告をA、B、Cの3パターンに分類して分析。問題点を指摘した。具体的には「『楽天トラベル』のカテゴリーでかつ、施設名や施設画像が表示されるタイプ」をAパターン、「『楽天トラベル』のカテゴリーでかつ、施設名が一切表示されず、主に貴社名(楽天トラベル)や貴社(同)のサービス内容が表示されるタイプ」をBパターン、「『楽天トラベル』とは一切関係のないもの」をCパターンと分類した。
Aパターンについては「広告内に特定の施設名が表記されていることから、仮にそのバナーが押され、そこに表示されていたいずれかの施設について予約が成立した場合、施設としても広告から一定の利益を受けたと考えることについて妥当性がある可能性もあります」とし、一定の理解を示した。
ただ、Bパターンについては「『楽天トラベル』としか記載されていないバナーについてまで、それが顧客にクリックされ予約が成立した場合、宿泊施設側がアフィリエイト報酬を貴社に代わって全額肩代わりすることに、強い違和感を覚えます」と不快感を示した。
また、Cパターンについては「もはや当業界と極めて関係性の薄いバナー広告であり、幅広く事業を展開されている貴社(楽天グループ)においては、楽天証券、楽天toto、楽天保険一括見積もり、オーネット(結婚相談所)など、様々なジャンルのバナーが存在します。もちろん楽天市場関連についても当然、ラーメン等の食品、洋服・時計等の物品、掃除機・テレビ等の家電製品など、無数のバナー広告が存在します」と指摘。「このような、宿泊予約と関連性の極めて薄いバナー広告クリックについても、同じく30日間という長期の判定期間を設定し、アフィリエイターへの報酬の一切を宿泊施設に負担させることについて、その正当性と合理的な説明がなされておりません」と問題提起した。
その上で「Bパターン以上に貴社の営業戦略のためのバナーであることが明白であり、このような旅行とは無関係の広告代金に至るまで当連合会所属の旅館ホテルが支払わなければならない理由を、さらにはっきりとお示しいただく必要があります」と詰め寄り、協議の場を求めた。
今回の要望書の提出にあたり、全旅連は全国の会員に対してアンケート調査を実施。1766軒が回答し、その結果を要望書に添付した。
Aパターンについては全体の79%にあたる1398軒が「納得できない」と回答。Bパターンには同92%の1625軒が、またCパターンには同94%の1665軒が「納得できない」と回答している。
楽天トラベル、箱根旅組に回答 新規約を近く公開へ
10月15日に楽天トラベルに対して「『楽天アフィリエイト施設課金』撤回申し入れ書」を送付した箱根温泉旅館協同組合は同23日、同社から回答書を受け取った。
同旅組が問題点として指摘した「各施設がアフィリエイトによる掲出サイト先を選択できないなど、一般的に広告宣伝を行う際の選択の権利が除外されている点」については、「楽天グループ全体で共同して効率的なマーケティングを実現するという趣旨に鑑み、選択制でなく全施設に適用させて頂きたく思っております」と回答。かみ合わなかった。
また「アフィリエイトによる掲載内容に御社が監視する義務を放棄しており、宿泊施設のブランドイメージを損なう可能性がある点」については、「アフィリエイトネットワークは楽天グループの広告に当たりますため、施設様のみならず弊社のブランド棄損を防ぐため、弊社の基準をもって監視を致しております」と回答。同グループの広告であることは認めたものの、監視体制は開示しないとした。
ただ「新しい規約にて弊社の基準をもって監視することを記載させて頂いております」と明記。新規約を11月初旬に公開するとした。
旅館協会、委員会で対応協議、引き続き撤回要望 旅館協会
10月18日に楽天トラベルに撤回を求める文書を提出した日本旅館協会は、同21日に同社からアフィリエイト施設課金を予定通り導入する旨の回答を受け取った。同29日に開いた専門委員会、IT戦略委員会で対応を協議。引き続き導入の撤回を求めていく姿勢を確認した。