楽天トラベルが4月4日から始めた宿泊施設の事後オンラインカード決済でキャンセル料が引き落としできないことに旅館団体が改善を求めている問題で、楽天側がシステムの変更を行う方向で準備を進めていることが分かった。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)と同社がこのほど行った非公開の会合で楽天側が明らかにした。ただ、サイト上にキャンセル料の不払いを助長しかねない表現が残っている点について、さらなる改善を行うよう、今後も両者で話し合いを進める予定だ。
楽天トラベルは今年に入り、宿泊のオンラインカード決済システムのリニューアルを契約施設に告知した。従来は顧客が宿泊する前にサイトに入力したクレジットカード番号で決済するか、顧客が旅館・ホテルの現地で現金またはカードで決済するかだったが、今回、宿泊の後に決済する事後カード決済を追加した。「日本の消費者は宿泊前より宿泊後の決済の方が予約時に安心する傾向が強い」(楽天トラベル)などが理由。旅館・ホテル側には、現地でのカード決済に比べて手数料が安くなることや、現地払いからオンラインカード決済に顧客を誘導し、予約時にカード番号を入力してもらうことでキャンセルの抑制が期待できるなどのメリットを説明している。
ただ、事前カード決済では可能なキャンセル料のクレジットカードでの引き落としは、事後カード決済では行えない。楽天側が関与せず、旅館・ホテルが直接、顧客に請求することになる。
この点について旅館・ホテル側は「事前カード決済では行えるキャンセル料の引き落としを、なぜ事後カード決済では行えないのか」「顧客からキャンセル料を徴収するのは、費用対効果から事実上困難。長期的視点で、宿泊施設は大きな被害を受ける」と異を唱えていた。
サイト上での顧客に対する説明画面では、カードによるキャンセル料の引き落としが行われない点を強調。「キャンセル時も安心」などとうたったことに、旅館・ホテル側から「本来、支払われるべきキャンセル料の不払いを助長するものだ」「キャンセル料回避をアナウンスするのは商売倫理上どうなのか」と疑問の声が挙がった。
楽天側が契約施設に対し、リニューアルの説明を一部を除き管理画面やファクスのみで行ったことも問題視した。
楽天側と全旅連の同問題での第1回協議会が4月5日に開かれ、この席で楽天トラベルの岡武公士社長は「オンラインカード決済におけるキャンセル料請求の問題に取り組む必要性を強く感じている」と述べ、改善に取り組む姿勢を示した。
全旅連からは佐藤信幸会長、大木正治会長代行、宮村耕資・総務委員長、永山久徳・広報小委員長、全旅連青年部の新山晃司副部長、内田宗一郎・緊急特別対策委員長らが出席。ユーザー向け画面について、「『安心』とのネーミングが、キャンセル料は請求されないという安心感を与えてしまう。『キャンセル料は請求されるもの』との内容に改善してほしい」などと訴えた。
5月8日に開いた第2回協議会では、楽天側から事後カード決済でもキャンセル料をカードで徴収できる機能を付加するよう検討を進めていることや、サイトでのキャンセルに関する表現を段階的に改めていることを述べた。ただ、説明文の細かい表現を巡り、両者の解釈が異なる部分もあり、今後も両者で話し合いを進めることにした。
次の第3回協議会は7月26日に開かれる予定だ。