民泊の現状など明らかに 宿泊ダボス会議


セッションで意見を述べる観光庁の鈴木課長(左)と厚労省の竹林課長

 15日、東京・永田町の衆院第1議員会館で開かれた、財団法人宿泊施設活性化機構(JALF、伊藤泰斗事務局長)主催の第3回「日本宿泊ダボス会議」には政官財から多くの著名人が出席、宿泊業を取り巻く問題や観光先進国実現に向けた宿泊業の果たす役割などについて持論を展開した。
 
 冒頭、観光庁の水嶋智次長が開会あいさつ。水嶋氏は2013年の小泉内閣から始まった観光立国の歩みを述べた。「当時、訪日外国人観光客は約500万人で、1千万人にするのに10年かかったが、2千万人はわずか3年で達成した。今やその数2869万人に達している」と強調し、観光政策の成果を誇った。

 また、「観光が日本の成長エンジンになっていくには、宿泊業が大きな役割を果たす」と期待した。

 財界を代表して、日本芸術文化振興会元理事長でキッコーマンの副社長も務めた茂木七左衛門氏が「芸術文化の発信基地としての宿泊産業」をテーマに基調講演。茂木氏は「犯罪は起きるものの、日本は世界の中で安全かつ治安のいい国だ。なぜそうなのかを外国人に理解してもらう必要がある。宿泊産業に携わる人はそうした視点を持って(外国人観光客に)接してほしい」と述べた。

 政界からは秋元司国土交通副大臣が「自民党が目指す中長期的な観光経済政策」をテーマに講演した。秋元氏は経済活性化の鍵は外国人観光客の消費活動にかかっていると指摘。「欧米と比べて日本に足りないのは、娯楽サービスにかけてもらうお金だ。エンターテインメントを含めた体験型に対する金の使い方がいかにも少ない」とした上で、夜間観光の環境整備などの必要性を説いた。

 午後のセッション「民泊元年に旅館業法改正」では、観光庁観光産業課の鈴木貴典課長と厚生労働省生活衛生課の竹林経治課長が登壇。6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)と改正旅館業法について、ポイントを解説した。

 鈴木課長は「人を宿泊させる事業を行う場合は旅館業法の許可を得ることが原則。住宅宿泊事業法の基本的な考え方は、ある一定の人を宿泊させる事業のうち、住宅で年間180日以下の範囲で行われるものについて、届け出を行うことで旅館業法の許可が不要となるというもの。自宅、賃貸住宅、別荘、セカンドハウスなどを、コンビネーションで宿泊施設としても使うというシェアリングエコノミーの分野について規定した法律だ」と説明。宿泊事業は、旅館業法の許可が大前提であることを強調した。

 また「住宅宿泊事業者の届け出が3月15日から始まったが、現状では届け出数は低調で、特区民泊、簡易宿所の許可が急増している。これは従前の民泊の多くがシェアリングエコノミー的なものではなく、収益事業として行われていたため、180日規制などを嫌ったものと推測される」と指摘し、グレーゾーン事業者が多かったことを示唆した。

 その上で「住宅宿泊事業法と、無許可業者に対する罰則規定が強化された改正旅館業法を、車の両輪として宿泊産業全体を適正化していく」と述べた。

 竹林課長は、旅館業法の法改正のポイントとして(1)ホテル営業と旅館営業の営業種別を統合し、旅館ホテル営業とした規制緩和(2)違法な民泊サービスの広がりなどを踏まえた無許可営業者などに対する規制、罰則の強化―の2点を挙げた。

 違法民泊については、「ゴミ出しや騒音といった地域住民とのトラブルにとどまらず、不幸な殺人事件など犯罪の現場に至るケースも増えてきている。防火、消防の観点からも危険であるし、東京五輪に向けてはテロリストの潜伏先となる懸念もある」と指摘。「厚労省、観光庁だけでなく、政府全体で対応機運が高まっている」と述べ、違法民泊撲滅への決意を示した。


講演する秋元副大臣


セッションで意見を述べる観光庁の鈴木課長(左)と厚労省の竹林課長

 
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