厚生労働省と観光庁が設置した「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」(座長・浅見泰司東京大学大学院工学系研究科教授)は6月20日、民泊の制度設計に関する最終報告書をまとめた。家主居住型、家主不在型を問わず、住宅提供者の届け出によって民泊営業を認める新法を制定するように提言。営業の条件とする年間の営業日数制限については、「180日以下の範囲内で適切な日数を設定する」の記述にとどめ、その具体化を政府の今後の法案化作業に委ねた。
民泊を「住宅」を活用した宿泊サービスとして、1日単位で有償かつ反復継続して利用させるものと位置づけた。住民票がある住宅内に家主が居住しながら営業する家主居住型、出張や旅行を含む家主が居住せずに営業する家主不在型の両方を行政への届け出を条件に認める。
住宅提供者の責務には、利用者名簿の作成(本人確認、外国人の旅券の写しの保管など含む)、玄関先などへの民泊営業の標識の掲示、近隣住民などからの苦情への対応などを挙げた。家主不在型の場合は、管理を委託する管理者の設置が要件となる。管理者は行政への登録を必要とする。
年間営業日数の制限に関しては、検討会委員の意見が一致しないため、政府の規制改革実施計画の決定内容と同じ「180日以下の範囲内で適切な日数を設定」の表現を採用した。日数設定の際には、旅館・ホテルとの競争条件に留意するように求めた。
民泊と、土地利用を定める用途地域規制の関係では、「住居専用地域」でも民泊の営業を可能にすべきとしたが、地域の実情に応じて条例などで営業を認めないことも可能にするよう提言した。
住宅提供者、管理者の法令違反に罰則を設けることも盛り込んだ。法令違反が疑われる場合や感染症の発生時など、行政による報告徴収、立ち入り検査も可能にするように求めた。
民泊仲介サイトなどを運営する仲介事業者にも行政への登録を要件化。法令違反に罰則を設けるとともに、保健衛生、警察、税務など行政当局の求めに応じて必要な情報提供を行うべきと明記。外国法人に対する取り締まりの実効性を確保するため、法令違反を行った法人などの名称や行為の内容を公表できるようにすべきと提案した。
また、民泊の新法制定に併せて、既存の旅館・ホテルに対する各種規制を見直すように提言。「民泊に対する規制の内容、程度との均衡も踏まえ、早急に検討すべき」と提言した。
民泊の新法、関連する旅館業法改正に関して政府は、同検討会の最終報告、閣議決定した規制改革実施計画などを踏まえ、法制化作業を進め、今年度中に法案を国会に提出する方針だ。