旅館業界が求めていた消費税の「外税表示方式」が期間限定ながら認められる。消費税転嫁対策特別措置法案がこのほど衆議院を通過。参議院に送られ、自民、公明、民主各党などの賛成多数で5日、可決、成立した。税率が8%に上がる予定の来年4月から3年間に限り、現在の内税(総額)表示に加え、本体価格と税額を別に表記する外税表示も可能になる。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の佐藤信幸会長は歓迎する一方、旅館業界内での意思統一や、旅行会社に対する外税表示化の協力も求める方針だ。
消費税転嫁対策特別措置法案は、消費税率のアップに伴い、立場の弱い中小企業の納入業者が大企業の商店などから税額の価格転嫁を拒否されることのないよう目指した法案。「消費税還元セール」などの禁止をうたったほか、現在は禁止されている外税表示も2017年3月末までの期間限定で認めることとしている。
例えば1万円の商品の場合、従来の「1万500円」に加え、「1万円+税」「税抜き1万円、税500円」(税率5%の場合)などの表示も可能になる。消費税率が2段階で上がることによる、値札の付け替えなどの負担を減らす狙いもある。
内税表示は、消費者に支払うべき価格を分かりやすく表示する目的で04年4月から事業者に義務付けられた。ただ、旅館業界では、「お客さまから『端数は泣いてくれないか』とよくいわれる。税込み1万円での販売が増えており、今後税率が8%、10%と上がればわれわれの商売はさらに苦しくなる」(全旅連・佐藤会長)と、外税表示の解禁を要望。
昨年4月18日には全旅連、日本観光旅館連盟(日観連、当時)、国際観光旅館連盟(国観連、同)、当時与党の民主党の観光振興議員連盟らと「消費税外税表示推進決起大会」を開催。国会議員らに陳情を行った。
佐藤全旅連会長は「われわれの要求が通り、大変ありがたい。外税化で消費税の価格転嫁が容易になる。厳しかった旅館経営の改善にもつながるはずだ。これを機に消費税はお客さまが支払うもの、という意識が広まればいい」と法案成立を歓迎。
全旅連の佐藤勘三郎副会長は「大変うれしく思う。政権与党にはお客さまに税金をしっかり負担していただける環境づくりをお願いしたい」と話している。
今後について佐藤会長は、日本旅館協会と業界で外税表示に関するコンセンサスを得るための対応を協議する方針。また旅行会社に対しても、宿泊商品などを販売する際、顧客に外税で案内をするよう、各社の協定旅館ホテル連盟などを通して協力を呼び掛ける方針だ。法案の期限が切れる17年3月以降への対応は現時点では白紙としている。