温泉旅館の販売加速 アゴダ(Agoda) CEO オムリ・モーゲンシュターン氏に聞く


アゴダ(Agoda) CEO オムリ・モーゲンシュターン氏

「価格」「技術」「現地化」 伸び率1位は日本市場

 ――アゴダが世界で展開するOTAビジネスの概要は。

 「アゴダは、ブッキング・ホールディングス傘下のOTAだ。同ホールディングスが展開するブランドは他に、ブッキングドットコム、プライスラインドットコム、カヤック、オープンテーブルなどがある。アゴダの従業員数は世界で6600人を超えている。従業員の国籍は約100カ国。国籍別従業員数のトップ3は、タイ、マレーシア、インド。アゴダの本社はシンガポールだが、最も大きな運営拠点はタイにある。39言語のプラットフォームと16言語の24時間カスタマーサポートを展開している。アゴダにとって特に大きな市場は、タイ、マレーシア、日本の3カ国となっている」

 「私たちは、技術とイノベーションにより、世界の人々がより簡単に旅行できるようになることを目指している。私たちの長期戦略は三つ。すなわち『価格(ベストプライス)』『技術(テクノロジー)』『現地化(ローカリゼーション)』だ。価格が手頃ではないと人々は旅行しない。現在の円安状態は、日本へのインバウンドにとっては追い風となっている。ユーザーに対して最適価格を提案できるかは最重要ポイントとなる。次にくるのが、私たちの得意分野である技術。特に決済手段を含むフィンテックのテクノロジーとAI言語モデルにはスピード感を持って取り組んでいる。ローカリゼーションも大事だ。それぞれの国のユーザーにとって使いやすいサイト(UI・UX)であること、宿泊施設などのパートナー企業にとっても使いやすいサイト(管理画面)であることが同時に求められる。ローカリゼーションというのは単に翻訳やサイトデザインだけの問題ではない。カスタマー側が欲しい情報とパートナー側が欲しい情報をそれぞれ適切に処理、提供できる仕組みが必要だ。例えば、フランス人が日本旅館に泊まる場合に、旅館側としては、お客さまが何を食べたくて何を食べられないか、朝食にパンは必要かなどを知りたいと思うかもしれない。予約者側は、体験できる温泉や日本酒、名物料理について知りたがっているかもしれない。日本の温泉旅館は、世界で日本にしかない特別の存在なので、洋室予約が前提のメガOTAのグローバルプラットフォームそのままでは対応できない。サイトの機能面でのローカリゼーションも必要となってくる」

 ――日本へのローカリゼーションはどの程度進んでいるのか。

 「最重要マーケットの一つとして取り組んでいる。アゴダが日本に進出してから既に14年以上がたつ。東京、横浜、大阪の3カ所のオフィスで259人が働いている。掲載している日本の宿泊施設は5万軒以上。これには旅館、カプセルホテル、町家などの民泊施設も含まれている。特に旅館に関しては、JTBとのパートナーシップのおかげで、世界、特にアジア人旅行客に対してのご紹介がうまくいっている。なお、掲載施設数が多いのは、東京、大阪、京都の3都市だ」

 ――アゴダのインバウンド送客数が多い国はどこか。

 「23年1~3月実績では、日本、タイ、ベトナム、マレーシア、韓国の順だ。日本は断トツの1位で、19年同期比を上回った。そして今も伸び続けている。22年同期は、タイ、マレーシア、ベトナム、韓国の順だった。日本へのインバウンドは、22年10月に入国時の水際規制を緩和したことで、一気に回復した」

 ――JTBとは「るるぶトラベル」への技術的サポートやアゴダへの客室在庫提供などで良好なパートナーシップ関係にある。他のトラベル企業とのパートナーシップもあるのか。

 「楽天、リクルート(じゃらん)とも客室在庫で連携関係にある。ANAとはロイヤリティプログラムのポイントで提携している」

 オムリ・モーゲンシュターン氏 イスラエルのヘブライ大学で物理学、コンピュータサイエンス、数学の学士号を、テルアビブ大学で物理学修士号を取得。アゴダ入社前はオンラインマーケティング最適化に特化したUpWest LabsファンドのQlika社の共同創業者兼CEOだったが、2014年にBooking Holdings Inc.(Agodaの親会社)に買収され、同社はAgodaの傘下入り。同時にアルゴリズムと学習システムのシニアプロダクトオーナーとしてAgodaに入社し、その後、製品開発担当副社長に昇格。さらに最高製品責任者に昇格した後、18年に最高執行責任者(COO)に就任し、グローバルオペレーション、プロダクト、パートナーサービス、カスタマーエクスペリエンスグループの推進に貢献。22年7月に最高経営責任者(CEO)に就任。【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】

 
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