環境省の二酸化炭素(CO2)排出抑制対策事業を導入した岩手県盛岡市、つなぎ温泉の湯守ホテル大観は、温泉熱を有効利用する設備を整備し、2012年12月から稼働させている。温泉熱を熱源として給湯などに活用することでボイラーに使用するA重油の使用量を削減でき、年間323トンのCO2の排出を抑制する。地球温暖化の防止に貢献するのと同時に、光熱費の経費節減の効果も期待されている。
湯守ホテル大観の温泉は、自家源泉からの加水・加温なしのかけ流し。54度の湯を湯冷まし水路と湯畑で冷まし、適温にしてから浴槽に供給している。この際に放散していた温泉熱を熱回収装置を設置して有効活用し、さらに浴槽からの排湯も熱源に生かすことで、暖房や給湯に使う燃料を大幅に削減する。
この仕組みにより湯守ホテル大観では、従来のA重油の年間使用量の3分の1を削減でき、それに相当するCO2の排出を抑制できると見込んでいる。光熱費についても、排湯を再利用する際に作動させるヒートポンプの電力使用料などを差し引いても、節減効果は大きいという。
設備の整備費のうち約3分の1に環境省から交付決定を受けた同事業の補助金を充てた。設計・施工は、温泉旅館や温浴施設の省エネルギーや安全衛生管理を手がけるトリリオン(東京都品川区)が担当した。
湯守ホテル大観を運営する大観の佐藤義正会長は「これまで冷ますだけだった温泉熱を有効に活用し、地球温暖化防止に貢献できる点が素晴らしい。経費節減にもつながり、環境に優しい宿としてPRにも生かせる。条件が合う温泉旅館は整備を検討してみてはどうか」と話している。
環境省の同事業の正式名称は、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金・温泉エネルギー活用加速化事業のうち温泉施設における温暖化対策事業。同事業の補助金交付は公募で決まるが、12年度の交付先は湯守ホテル大観を含めて旅館・ホテル6件。09年度からの累計では約20件の交付実績がある。環境省では、13年度予算案にも同様の事業予算を計上している。
設置したヒートポンプ