玉川大学は14日、東京都との連携事業「観光経営人材育成講座」を開講した。「Withコロナ時代の観光産業~競争に勝ち残る『強い経営』のためのヒント」をテーマに11月25日までの期間に無料講座を5回行う。
募集定員25人に対して43人の応募があり、全員を受け入れた。14日、品川プリンスホテルの会議室で行った第1回の講座には、ソーシャルディスタンスを確保したスクール形式で14人が参加。それ以外の受講生はオンラインでリアルタイム受講した。
通期のメイン講師は元プリンスホテル取締役・元帝京大学教授の河野正光氏が担当。加えて毎回別の玉川大の教員と観光業界の実業者が講演する。同日の初回講義には、同大観光学部の法島正和教授と深山荘高見屋女将の岡崎純子氏が講師として登壇した。
タイ国際航空、タイのホテル、JTBでの勤務経験を持つ法島教授は「体験的『非常時のホテル経営』タイでの13年から」と題して講義した。ホテル時代の上司であった豪州人総支配人の言動を振り返りながら、「リーダーシップには『変革型』と『交換型(管理型)』の2種類がある。2008年にリーマンショック、10年にバンコク騒乱、11年にタイの大洪水、14年にタイの軍事クーデターが起きたが、非常事態では変革型リーダーシップが管理型リーダーシップよりも高いパフォーマンスを示すという研究報告もある。コロナ禍の現在の参考になるのでは」と指摘した。
法島教授はその上で「変革型リーダーシップというと『カリスマ性』や『知的刺激を与える存在』を思い浮かべがちだが、『個人重視』が最も大事だ。部下と危機感を共有すること、聞く耳を持つことが重要で、特別な才能がなくても変革型リーダーにはなれる」と述べた。
岡崎氏は「『再スタート』する訪日外国人獲得競争に勝つ旅館」で登壇。「山形県蔵王温泉の高見屋旅館は1716年の創業で304年の歴史を生き抜いてきた。先代の15代目から『おかれた場所で花を咲かせなさい』と教えられ、高見屋のもてなし(接客サービス)を体系化。地域の全旅館・商店街などとの一体感の醸成も常に心掛けてきた」と話した。
また、岡崎氏は「時代の流れに適応しながらも、守るべきもの、伝えるべきものは次に継承していかなければならない。お金で買えないものは『歴史』と『自然』、そして『お湯(温泉)』」と語った。さらに「コロナ禍の中では、お得意さまや取引先に随分助けられた」と述べ、ロイヤルカスタマーや地元客などの大切さを強調した。
河野氏は「本講座の狙いは『ニューノーマル時代にどう生きるか?』ということ。観光・ホスピタリティ業界の核心であるホスピタリティ精神を守りながら、新たなテクノロジーを取り入れたビジネスのイノベーション推進(DX=デジタルトランスフォーメーション)や女性の活躍による多様性を生かした組織の活性化が要請されている」と指南。「観光は旅行先の『地域の恵みや魅力』、そこに『住む人々の暮らし』、そこで培われた『文化・技』に触れることで、感動した体験を思い出に残すプロセスだ。その機会をいかに『創造し提供』するかが、地域・施設の観光復活の鍵になる」と結んだ。
深山荘高見屋の岡崎女将が講演