環境省は14日、国立・国定公園内での地熱開発を対象とした「地熱発電事業にかかわる自然環境検討会」の最終検討会を東京都内で開き、国立公園内での地熱発電開発を一部認める方針を固めた。これにより従来認められてこなかった国立公園外からの熱水採取のための温泉井戸の斜め堀り(斜行掘削)などが可能となり、地熱発電開発が加速すると見られる。国立公園内やその周辺には既存の温泉源を利用している旅館・ホテルも多く、自然景観の保全の面以外にも源泉への影響や安全性などの面で懸念が広がりそうだ。
同検討会は、再生可能エネルギーの導入促進を進める政府方針を受け、昨年6月から開発基準の緩和について検討を行ってきた。最終検討会では具体的な規制緩和案について意見交換を行った。
国立公園については自然公園法で景観などの保護の観点から特別保護地域、第1種特別地域、第2種特別地域、第3種特別地域、普通地域に分類されており、各地域の開発については普通地域が届け出制となっている以外禁止されている。
特に地熱開発については、1972年の「国立公園および国定公園内における地熱発電の開発における了解事項」で、既存の6カ所での実施を除き国立・国定公園内の景観や風致維持に支障がある地域での新規工事・開発を推進しないものと通達。1979年にも自然環境保全審議会から環境庁長官へ具申した「国立・国定公園内における地熱開発に関する意見」で、地熱開発計画地の選定において国立・国定公園内の自然環境保全上重要な地域は避けることを基本とすべきとされた。加えて1994年には普通地域内での地熱発電についても風景の保護上の支障の有無を十分検討した上で開発の可否を判断するよう環境庁が通知している。
14日の検討会で大筋合意した緩和基準では、国立公園内の特別地域、第1種地域での地熱発電は全面的に認めないものの、第2種、第3種の認定地域については地熱発電開発を目的とした地下資源の開発を認めることとした。ただし同地域内での熱水の採取、還元のための井戸の坑口や発電設備の設置は認めず、普通地域もしくは公園外に設置することに。規制緩和に伴い、地熱開発にかかわる先の通知も破棄する方針だ。
同省では自然公園内での地熱開発についての規制緩和について、昨年11月にすでに最終検討会を終えている「地熱資源開発にかかわる温泉・地下水への影響検討会」を受け取りまとめたガイドラインの内容と合わせ、24日に意見聴取会を開催。その後さらに検討を進め、3月中には新たな開発基準を取りまとめる考えだ。