環境省は温泉旅館から出される排水の特性を把握するため、近く水質調査に着手する。人体に悪影響を及ぼすとされるホウ素やフッ素を多く含む温泉地が対象で、全国10〜20カ所程度を選ぶ方針だ。早ければ年度内にも調査結果をまとめ、08年度早々に設ける検討会での、今後の排水規制のあり方を議論するたたき台とする。「調査結果をもって直ちに法的措置を取ることはない」(水資源課)としている。
ホウ素やフッ素は国内の大半の温泉に含まれている。水質汚濁防止法の規制物質にも指定されているが、その排水処理技術(除去技術)については、低コスト、省スペースで事業者が導入可能な技術は確立していない。
また、技術開発には温泉排水の特性を把握する必要があるが、十分なデータが得られていない現状を踏まえ、水質調査を実施することにした。
調査にあたっては、近年増加している日帰り温泉なども対象とする。同法の未規制施設であり、温泉旅館との規制の不平等が指摘されているのを受けた措置。
1温泉地に付き5施設程度(温泉旅館や日帰り温泉施設、病院など温泉を利用したその他施設)を対象に行い、それぞれの排水を比較調査する。さらに、1施設について2〜3カ所採水する。具体的には浴槽に流入する温泉水、温泉排水、温泉排水と生活排水の混合排水など。
この他、(1)掘削か自然湧出かといった温泉の湧出形態(2)源泉かけ流し、循環ろ過など利用形態(3)排水実態(4)周辺環境──などについても調べる。
温泉旅館の排水規制については、昨年6月末で現行の暫定排水基準(ホウ素は1リットル当たり500ミリグラム、フッ素は同15〜50ミリグラム)の期限が終了し、7月からは一律基準が適用されることになっていた。しかし、安価な除去技術が確立されていないため、温泉旅館や温泉地を抱える自治体などからは「除去装置導入に多額の負担がかかる。暫定基準が撤廃されれば廃業に追い込まれない」として見直しに反発していた。
同省も一定の理解を示し、2010年6月末まで現行基準を適用することにした。
同省が今回、水質調査に踏み切ることで、なりを潜めていた感のあるホウ素、フッ素問題が改めてクローズアップされそうだ。