日本政策金融公庫はこのほど、ホテル・旅館、飲食など生活衛生関係営業の景気動向等調査の7〜9月期分を公表した。同期の業況判断DIは全業種でマイナス13.5と、前期比6.1ポイント低下した。ただ、前年同期比では2.5ポイント増と、2期連続で前年同期の水準を上回った。公庫では「生活衛生営業の景況は緩やかに持ち直しの動きが続いている」とした。業種別では、ホテル・旅館が17.1と、前期比11.2ポイント、前年同期比10.4ポイントそれぞれ上昇した。
調査は9月上旬、生活衛生関係営業3220企業に行い、このうち3054企業が回答。ホテル・旅館業は170企業が回答した。
業況判断DI(前期比で好転とする企業割合から悪化とする企業割合を引いた値)は、ホテル・旅館のほか、映画館、公衆浴場など9業種中5業種で前期比上昇。飲食業、理容などは下降した。
来期(10〜12月期)の見通しは、全業種で今期比3.1ポイント増のマイナス10.4。業種別では、ホテル・旅館が10ポイント以上下降するものの、プラス水準は維持する見通し。
このほか同期の売上DI(前年同期比で増加の企業割合から減少の企業割合を引いた値)は、全業種が前期比3.8ポイント減のマイナス14.4。ホテル・旅館が同1.9ポイント減の12.9。
同期の採算DI(当該期に黒字の企業割合から赤字の企業割合を引いた値)は、全業種が同1.5ポイント減のマイナス2.3。ホテル・旅館が同3.5ポイント増の10.6。
業況に対する判断理由のうち、ホテル・旅館の主な回答は次の通り。
「レジャー志向が高まっているためか、夏休みを中心に家族連れが増えているため業況は堅調であった」(今期、好転、茨城県)。
「今期は外国人観光客が増加し好転した。来期に向けても外国人観光客を中心に予約は好調であり、業況は継続するものと思っている」(今期、好転、大阪府)。
「7〜8月は高校総体が開催され、宿泊客は大幅増加。9月も国体が開催されるため、売上高増加予想で例年になく好調である」(今期、好転、和歌山県)。
「三菱重工の造船作業員の長期宿泊客があったこと、教会群の世界遺産登録により夏休みの観光客が急増したことで景況が好転した」(今期、好転、長崎県)。
「中国や台湾からの来客が好調なため稼働率は上昇している」(今期、好転、熊本県)。
「『福が満開、福のしま』宿泊券、プレミアム商品券、地域限定優待券等、行政からの支援があるが、風評被害の影響が払拭されていないからか、首都圏からの利用者が低調で、目に見える改善までには至っていない」(今期、不変、福島県)。
「箱根山大涌谷の噴火警戒レベルが2から3に引き上げられた影響で、8月のお盆までの宿泊客は確保できたが、それ以降は宿泊客が減少しており、全体で売り上げは前期および前年を下回った」(今期、悪化、神奈川県)。
「冬は閑散期になるが、雪を珍しいと感じる外国人観光客が増えており、閑散期でも客単価を落とさず安定した売り上げが確保できる」(来期、好転、北海道)。
「来期は伊勢志摩サミット開催や県による外国人訪問客の支援などが、どれだけの利用客増加につながるか様子見の状況」(来期、不変、三重県)。
「道後温泉を訪れる国内外からの観光客が増えており、部屋の稼働率も好転している。これに合わせて各種イベントを実施しリピーターも増加しているが、例年、来期は高い稼働率となる時期のため現状維持くらいだと思う」(来期、不変、愛媛県)。
「京都観光の需要は継続すると思うが、学生相手の当ホテルのような施設の需要は減少すると思う。関西圏にFIT(個人旅行)用の宿泊施設が増えることにより、学生団体が京都宿泊に戻る可能性もある」(来期、悪化、滋賀県)。