全国産業観光推進協議会・日本観光振興協会はこのほど、「産業観光まちづくり大賞」の金賞に、福井県越前市と市観光協会の「『手仕事』の価値を活用した『観光にも対応できる産地』×『稼ぐ産業』を目指して」に決めたと発表した。表彰式は11月9日、福岡県北九州市で開催する「全国産業観光フォーラムin北九州」で行う。
16回目の今回は、全国から過去最多となる32件の応募があった。審査委員会(委員長、福川伸次・東洋大総長)で審査し、金賞のほか、経済産業大臣賞、観光庁長官賞など計7団体を選んだ。
金賞受賞の越前市は、市内(越前和紙、越前打刃物、越前箪笥(たんす))、市外(越前漆器、越前焼)の手仕事や伝統工芸に触れられる機会を「産地訪問型」と「集合イベント型」の2通りの方法で提供。仕事場への訪問と職人との交流にこだわったプログラム作り、見る順番を最適化したストーリー性のある、2~3時間のモデルコース作りに取り組んでいる。
参画事業者には見学、体験の原則有償化を働き掛け、提供するコンテンツの質などを向上させ、持続的な産業観光のための環境づくりを進めている。
また、タクシー会社5社と連携し、点在する工房や市内の観光施設をつなぎ、定額(500円)で利用可能なサービスを実施、来訪者の利便性向上を図っている。
選定理由として、参画事業者へのフォローアップやタクシー会社と連携しての2次交通課題の解決などにより、地域全体での取り組みに拡大している点を挙げた。
経済産業大臣賞は合同会社ミライズ(新潟県)の「月岡温泉『歩いて楽しい温泉街へ』空き家・空き店舗再生事業」に。
廃業店舗や空き家・空き地が増え、景観を阻害していた温泉街で、若手旅館経営者らが出資して合同会社を設立、民間による店舗リノベーション事業を実施。宿泊客を街中に出すことをコンセプトに、温泉街に点在する空き店舗や空き家・空き地を「新潟」をテーマにした体験型店舗などに再生してオープンし、歩いて楽しめる温泉街づくりを進めている。
補助金や助成金などを使用せず、自前資金により1年に1店舗のペースで改修を行う体制ができており、今年9月現在、「新潟地酒PremiumSAKE 蔵」など9店舗を運営、11月に10店舗目がオープンする予定。
「若手旅館経営者が協力して温泉街を立て直していく事業スキームの在り方や、店舗を点在させることで回遊性を高め、温泉街全体への経済波及を生み出している」と高く評価している。
また、観光庁長官賞は佐賀県の鹿島市観光協会の「肥前浜宿の保存活用と酒蔵ツーリズム」が受賞した。
国の重要伝統的建造物群保存地区となっている肥前浜宿で、蔵や町並みの保存活用を進めるとともに、富久千代酒造「大吟醸鍋島」がインターナショナルワインチャレンジで世界一の称号を得たことを契機に市内6蔵を中心に鹿島酒蔵ツーリズムを実施している。
町並みの保存・活用と酒蔵ツーリズムの取り組みに加え、肥前浜駅での日本酒バー誕生や酒蔵を利用したオーベルジュの開業など、経済効果を生む新たな取り組みを行っていることが選定のポイントになった。
その他の受賞団体は次の通り。
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