国際観光ホテル整備法に基づく旅館・ホテルの登録に関し、登録事務を行っている日本観光協会は3月31日付けで、109軒(旅館85軒、ホテル24軒)の登録抹消を公示した。廃業などにより営業が確認できない旅館・ホテルの登録取り消しを観光庁が命じたことによる抹消だ。登録制度には期間ごとの更新がなく、廃業などの際には届け出るよう定められているが、以前から未届けのケースが多くあり、廃業後も登録が残っていた案件を整理した異例の措置だ。
観光庁は、登録施設の設備やサービスが登録基準を満たさず、改善の指示にも応じない場合などに登録の取り消しを命じることができるが、今回の措置はすべて、施設や営業の存在が確認できないのが理由。取り消し命令が出ること自体が初めてとみられる。
以前から、未届けのまま廃業した施設は相当数あるとされていたが、今回取り消しに及んだのは、観光庁が昨年6月、登録施設の経営実態を把握しようと、全施設を対象に調査票を郵送した際、「宛て所不明」などの施設が多数に上ったため。配達証明による通知や一部の現地調査を経て取り消しを決めた。現地調査では、別の用途の建物になっていたり、さら地になっている所もあった。
観光庁観光産業課は、「登録制度は営業免許などとは性格が異なり、登録自体が任意ではあるが、本来、出すべき届け出が出ていないというのは問題」と指摘する。
国際観光ホテル整備法は施行から約60年が経過。観光庁が設置した宿泊施設の外客受け入れのあり方に関する有識者検討会(09年9月〜10年3月開催)でも整備法の位置づけは検討テーマに挙がっていた。登録抹消や登録内容の変更の手続きが行われていないケースも問題視され、定期的な自主点検の励行、監査の強化の必要性などが指摘されていた。
抹消、新規登録などは登録実施機関の日観協が毎月公示している。3月分は、観光庁からの取り消し命令による抹消を31日付けで公示したほか、施設からの届け出による抹消13軒(旅館7軒、ホテル6軒)を30日付けで公示した。