原発事故の風評被害が深刻な福島県。甚大な影響を受けている会津やいわきなどの観光関係者は、観光産業のみならず地域経済の危機であるとして、政府に対し支援策を要望している。会津地域では今年度の修学旅行の9割以上がキャンセル、一般観光客の客足も戻っていない。正確な情報発信による風評の払しょく、観光の活性化に関する対策を求めている。
会津地域は福島第1原発から100キロ以上離れ、避難者などを受け入れている地域だが、風評が根強い。ゴールデンウイーク(GW)はにぎわった所もあるが、観光の入り込みが回復しない。特に春から秋にかけては修学旅行のシーズンで例年ならば1千校、8万人が訪れるが、9割以上がキャンセルになっている。
東山温泉、芦ノ牧温泉では、夏までの団体客を中心とするキャンセルが合計11万7千人分に上り、新規予約も厳しい。
東山温泉観光協会の川添修也会長(御宿東鳳社長)は「観光は波及効果が大きい産業だけに地域経済は危機的な状況。ぜひ泊まりに来て、土地のものを味わってほしい」と訴える。
芦ノ牧温泉観光協会の星弘子会長(丸峰観光ホテル社長)も「本格的な回復にはほど遠いが、GWは活気づき、個人客のネット予約も少し動き始めた。これを機に風評の払しょくを」と話す。
会津若松商工会議所(宮森泰弘会頭)と会津地域の観光・商工関係者でつくる会津方部商工観光団体協議会では、政府などに復興策を要望している。13日には、宮森会頭をはじめ川添会長、星会長ら関係者が観光庁を訪れ、溝畑宏長官に要望書を手渡した。会津若松市の菅家一郎市長も同席した。
要望書では、観光による経済復興を推進するため、(1)福島県への観光送客や各種大会などの開催の奨励(2)福島県への修学旅行の奨励(3)正確な情報発信による風評の早期払しょく──などを求めている。
溝畑長官は4月29、30日に福島県入りし、会津、いわきなどを訪れており、「旅行に支障がないことはもちろん、地域の皆さんの観光復興への熱意を強く感じた」と述べ、「風評を払しょくし、観光と修学旅行の回復につながる施策に取り組んでいく」と述べた。
一方、いわき地域も震災に加え、原発事故の風評被害が長期化し、観光産業が大打撃を受けている。12日には、スパリゾートハワイアンズを運営する常磐興産の斎藤一彦社長をはじめ、いわき商工会議所、いわき観光まちづくりビューローの関係者が東京入りし、大畠章宏国土交通相、溝畑長官に要望書を手渡した。
いわき観光まちづくりビューローは、支援策として(1)原発事故の収束と、正確な情報の発信による風評被害の払しょく(2)観光産業への風評被害などに対する補償制度の確立(3)雇用確保に関する支援(4)東北道に加え、常盤道、磐越道の高速道路料金の無料化(5)観光需要の回復への支援──などを求めている。
訪問にはスパリゾートハワイアンズのダンサー「フラガール」たちも同行。同施設は現在休業中で、安全点検などを進め、10月中の全面的な再開を目指している。フラガールたちは避難所での慰問公演のほか、巡回公演をスタートさせ、全国で復興を願って踊る。
首にかけるレイを贈られた大畠国交相は「事態の収束と風評被害の払しょくに全力を尽くし、多くの人にフラガールの勇姿を見てもらえるようにしたい」と述べた。
会津地域の関係者が溝畑長官に対策を要望