福島市、復興への願い込め「こでらんに博」スタート


ボランティアガイドによる案内もある旧堀切邸(福島市の飯坂温泉)

ボランティアガイドによる案内もある旧堀切邸(福島市の飯坂温泉)

 福島県福島市は、原発事故に伴う放射能への風評などを払しょくし、観光客の本格的な回復を目指すイベントを10月からスタートさせた。市全域を博覧会会場と見立てて国内外から旅行者を誘致する「福島市こでらんに博」。福島市観光コンベンション協会を事務局とする実行委員会の主催で、3年間にわたって開催する。地域の復興への願いを込めて、体験プログラムやまち歩きツアー、各種イベントを展開する。

 放射能の風評などの影響は、福島市をはじめ福島県の観光を苦しめている。観光庁の宿泊旅行統計によると、観光客を主体に受け入れる県内の宿泊施設の延べ宿泊者数は、今年4〜6月期で震災前の2010年に比べて約3割の減少。地域によって状況はさらに厳しい。果物狩りの観光農園などの集客も大幅に落ち込み、観光客の回復が課題となっている。

 こでらんに博実行委員会の渡邉和裕会長(山水荘社長、土湯温泉観光協会会長)は、「多くの旅行者に来てもらい、福島の生活が平常で、復興に向けてがんばっていると知ってほしい」と訴える。同時に「福島の魅力は自然や文化、食、人情と言われてきた。地元の人には当たり前のものだったが、震災を契機にその貴重さに気づかされた。それらを地域の宝物として磨き直し、おもてなしに生かしたい」と語った。

 博覧会の名称「こでらんに」は、福島の方言で「こたえられない」「たまらない」という意味。市内の7地域を「パビリオン」に位置づけて集客の拠点とする。パビリオンは飯坂、土湯、高湯、松川、飯野、信夫山、街なか(中心市街地)。周遊や宿泊を促すスタンプラリーも実施している。

 各パビリオンは、歴史や文化、自然などにちなんだ観光スポット、体験プログラム、イベントの情報発信を強化。例えば温泉地では、飯坂温泉が共同浴場「鯖湖湯」や旧家の土蔵などが保存されている「旧堀切邸」を、土湯温泉はまち歩きや伝統こけしの絵付け体験を、高湯温泉は源泉かけ流しにこだわった宿泊・入浴施設をアピールしている。

 博覧会は、根強い放射能への不安や風評の払しょく、地域の復興に向けて、3年間をかけて実施する。季節ごとにイベントや体験プログラムを更新し、ウェブサイトやガイドブックなどを通じて積極的に情報を発信していく。

 旅行会社に送客への協力を求めていくほか、10月上旬にはメディアを対象にしたモニターツアーを実施し、博覧会をPRした。メディアを前に福島市の瀬戸孝則市長は「こでらんに博は、福島の復興と未来を担う観光事業者や若者の声、市職員の政策提案などを具体化した事業だ。福島の元気を全国にアピールできるように一歩一歩取り組み、博覧会を成功させたい」と力を込めた。

交流型イベントで福島の復興を応援
 福島市内では、復興を応援しようと、全国各地の企業や団体が出展する交流型のイベントが多数開催されている。今月6、7日には、焼き鳥で有名な地域が出展した「全国やきとリンピック」、13日には全国の伝統芸能が披露されるJTBのイベント「杜の賑い」、13、14日には静岡県浜松市などが参加した「全国餃子万博」が催された。

 このうち全国やきとリンピックには、「7大焼き鳥タウン」と言われる福島市をはじめ、北海道の美唄、室蘭、埼玉県の東松山、愛媛県の今治、山口県の長門、福岡県の久留米の人気店が出展。東松山市の森田光一市長ら関係者も応援に駆けつけた。

 やきとリンピック実行委員会の委員長は、福島市の隣、川俣シャモで知られる川俣町の古川道郎町長が務めた。古川町長は「原発事故以来、福島県内の自治体は復旧、復興に向けて懸命となっている。全国からの応援でイベントが開催できてうれしい。食の安全、安心を訴え、川俣シャモを再び羽ばたかせたい」と話していた。

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