日本観光振興協会は21日、「産業観光まちづくり大賞」を決めた。7回目となる今回は5団体が選ばれ、金賞は東京都大田区のおおたオープンファクトリー実行委員会が受賞した。表彰式は同日、石川県小松市で開かれた「全国産業観光フォーラムinこまつ」で行われた。
同賞は産業観光による観光まちづくりを実践し、他の地域の模範となる優れた事例を表彰する制度で、2007年度に創設。産業観光に取り組む地方自治体や観光協会、商工会議所、NPOなどを対象に幅広く募集し、(1)受け入れ側と訪問側双方にメリットがあるビジネスモデルになっているか(2)継続性があるか—を主な評価の視点として審査する。
大田区は約4千の工場が立地するモノづくりのまちで、切削、プレスなどの機械金属加工にかかわる技術(基盤技術)の集積地として知名度が高い。区は「大田クリエイティブタウン構想」を掲げ、実現するための一つの手段として観光の力に注目してきた。
おおたオープンファクトリー実行委は大田観光協会、工和会協同組合、首都大東京、横浜国立大、東大で構成。同ファクトリーはモノづくり観光の中核をなすプロジェクトで、特定エリアにおいて、期間限定で複数の工場見学と体験プログラム、さらにそれを巡るまち歩きツアーによってモノづくりとモノづくりのまちをアピールしてきた。
審査会による審査の結果、(1)モノづくり(生産)現場を産業観光資源として捉え、モノづくり現場の再生や活性化を図ってきた(2)観光客の受け入れ窓口や対応、産業観光資源としての魅力をアピールし、イベント継続へのステップも十分進められており、地域連携のモデルケースとなる(3)外国人観光客にとっても魅力的—などが評価された。
銀賞は室蘭観光推進連絡協議会(北海道室蘭市)と宇部・美弥・山陽小野田産業観光推進協議会(山口県)が受賞。
室蘭観光推進連絡協が工場夜景を中心に、ものづくりや食の魅力などを案内できる市民ガイドの育成にも力を入れていることなどを踏まえ、「明治初期からの歴史的な発展経緯を重視し、それらにかかわる歴史的産業資産を産業観光の素材としてうまく活用している」と評価した。
山口県の協議会については、宇部・美弥・山陽小野田産業観光バスツアーを取り上げ、「CSR(企業の社会的責任)ツーリズムというユニークなネーミングで7年間にわたり着実な成果を上げている」「テーマに沿ったストーリー性を持たせており、地域産業について熟知している『産業観光エスコーター』の同行で、参加者の知的好奇心を満足させる内容となっている」とした。
このほか、秋田内陸縦貫鉄道会社(秋田県)、静岡商工会議所(静岡県)が特別賞を受賞した。
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