秋田県小坂町は9、10日の両日、毎年恒例となった「第24回アカシアまつり」を記念した「観光フォーラム」を開いた。
小坂町は、明治末から大正の初期にかけて日本一の銅の産出を誇った鉱山の町として栄えた。古い町並みには、かつての鉱山で働いた人達を癒す芝居小屋「康楽館」など昔日の面影を残す、人口7千人の小さな町。川口博町長は、新しく再スタートしたDOWAホールディングスが、世界で捨てられた携帯電話を回収して再資源化するリサイクル工場に投資を拡大し、世界から視察に訪れる企業群が増えているのを機に、産業観光を世界に発信、町づくりを加速させようとしている。
この日のフォーラムでも「小坂町の観光をどうするか」などで活発な議論があった。小さな町のこの動きは、全国的に特徴のある地域の町づくりとして今後、大きく注目されるだろう。
フォーラムは、大島利徳・観光振興懇話会理事長が「まず町長に町を住みやすく、すばらしい町にしよう、という強い姿勢がある。そして町民が一体となって支えている。この町はDOWAホールディングスとともに産業観光のモデルになる」と町の将来は明るいと指摘し、吉川廣和DOWAホールディングス会長・CEOは、「小坂町におけるリサイクルの現状と今後について」を再生・資源・無害化など環境施設も含めた拡大投資の状況を図解を使って説明した。そしてこの現実を世界に発信し、産業観光に結び付けていきたい、と強調した。
パネルディスカッションは、山崎養世・山崎養世事務所代表がコーディネーター。パネリストからの発言は次のように、小坂町の観光について今後に示唆を与えるものとなった。
「ここは3回目になる。この町は鉱山の廃墟で町はゴーストタウンになった。それが再び世界の町になろうとしている。それは古い携帯電話を回収してリサイクルする世界唯一の工場がここにあるからだ。これは驚くべきことだ。この町の今後は面白くなる。ゴミを資源にする。観光とは、もったいない物を掘り起こして資源にすること。お客が動くと商売になる。JRは2つの区間を結ぶ。地域の人に利用される鉄道だ」(見並陽一・JR東日本常務取締役)。
「お客を安全に正確に運ぶのが航空会社の使命だ。観光だけでは商売にならない。ビジネスと並行しなければならないという収支構造がある。JRと違うところは、速く海の上を飛ぶこと。新しい産業観光が確立されつつある。全国的にもその方向がある。小坂町は必ず世界的になる。空の役割も大きくなるだろう。大いに期待している」(浜田健一郎・ANA総合研究所代表取締役)。
「この町には、まだ英語や中国語などの標識がない。産業観光にはこれが欠かせなくなる」(常田照雄・毎日新聞社執行役員事業本部長)。
「百年前に世界一栄えた。そして廃れた。これから再び世界一になろうとしている。今後はDOWAとどう連携するかにかかっている」(コーディネーターの山崎氏)。
会場では小坂町の高校生が真剣に聴いていたが、これは今後に大きな意義を持つことだろう。
また、小坂町は3年前から観光大使を任命しているが、今年で45人となった。
著名人がパネリストで参加 (小坂町・康楽館)