原口一博総務相は10日、貸切バスの安全確保と利用者保護の観点から、貸切バス事業者と契約を結ぶ旅行会社への指導、監督の強化などを求める改善勧告を、前原誠司・国土交通相に対し行った。総務省行政評価局が行った調査で、旅行会社がバス事業者に対し法令違反となる旅程を提示したり、届出運賃を大幅に下回る運賃で契約を求めたりした事例が明らかになったためで、勧告では法令違反に旅行会社が関与している場合の、国交省からの旅行会社への指導の徹底などを求めた。
勧告は、総務省が国土交通省の地方運輸局や厚生労働省、全国のバス事業者らに対し行った調査に基づき行った。
調査によると、アンケートに答えた2629の貸切バス事業者のうち45.9%が、「改善基準告示違反の原因となるような旅程の提示を受けることがある」、33.7%が「契約先から安全な運行上で問題がある旅行計画を提示され、承諾せざるを得ない状況となっている」と答えた。その一方で、旅行会社の法令違反への関与が認められたとして国土交通省から観光庁に通知されたことは、08年10月の通知制度発足以降1件もなかった。
貸切バスの運賃は、地方運輸局長が提示した公示運賃の範囲内で設定、届け出ることとなっているが、契約書、発注書などを実地調査した84事業者のうち90.5%にあたる76事業者、アンケートでは2629事業者のうち91.9%の2417事業者が契約先主導の契約により届出運賃を収受できていないと回答。旅行会社が届け出済みの運賃を下回る運賃表を独自に作成し、閑散期には公示運賃の下限額の28.0%の契約を求めた事例もあった。
一方、旅行会社側は、公示運賃が高く、社会の現状に合っていないと主張している。
調査では、貸切バス事業者が届出運賃を収受できず経営が圧迫されることで、交替運転者の配置の不実施や、運転手の拘束時間や連続運転時間の超過といった法令違反につながっているとしている。