サービス産業のイノベーションと生産性の向上を支援する「サービス産業生産性協議会」では、観光業界の人材育成に適した研修を提案している。社会人インターンシップ「大人の武者修行」がそれだ。
優れた企業に一定期間勤務し、一緒に汗をかきながら働くことを通じてサービスの極意を学び取る。ビジネスの達人から直接薫陶を受け、座学では得られない本質や神髄を理解する。約100社の優良企業・団体が受け入れ修行先。昨年度の修行者の81%が「非常に役立った」と回答し、満足度は高い。
最短2週間(実働8日間)から修行が可能。武者修行後のレポートやアンケートの提出が条件となっているため、修行者のみならず、人を送り出す企業・団体側にも成果が見える仕組みだ。研修費、交通費、滞在費の3分の2が補助され、費用面でお得な実地体験型研修でもある。
その修行先の一つが、然別湖でのアウトドア観光ビジネスを手掛ける「北海道ネイチャーセンター」だ。坂本昌彦社長は、地域活性を事業として成功させるポイントには(1)熱意(2)地域特性の理解(3)人脈づくり―の三つがあると指摘する。さらには、「自分を表に出さない。コーディネーターはあくまで黒子であり、プレイヤーの人たちを前面へ押し出すのが仕事だ」と持論を語る。
坂本社長の下で2014年度に10日間の修行に励んだのが高橋潤さん。精神障害者の支援ビジネスを立ち上げようとしたが、なかなかうまくいかない。行政とのつながりを生かしたビジネスのコツを学びたいとの動機から弟子入りした。
「実力を付けて、関係者の信頼を得ることが重要」などと坂本社長から教えられ、「いろいろな指摘を受け、考え方の甘さに気付かされた」と高橋さん。
修行の成果は如実に表れた。北海道で有識者として知られる坂本社長に弟子入りしたことで信用が生まれ、これまで取引が難しかった北海道庁や札幌市などとの商談が進んだという。
大人の武者修行では、「富士宮やきそば学会」の渡邉英彦会長から、富士宮を事例とした地域おこしのビジネスモデルも学べる。
渡邉会長の視点は常に地域重視だ。B級グルメのイベント「B―1グランプリ」にも携わっているが、この開催目的も「食べ物を売ることではなく、食べ物を通じて地域をPRし、より多くの人に地域に足を運んでもらう地域おこし」と話す。