大阪観光大学は12月20日、同大キャンパスで創立記念学術シンポジウム「提言 日本の大学、観光『学』の未来とは」を開催した。大阪観光大が新学校法人2年目に入ったことを記念したもの。大学関係者や教育、自治体関係者らが参加し、基調講演やパネルディスカッションを通して、観光学の今後を考えた。
第1部の基調講演では、山極壽一・総合地球環境学研究所長(京都大前総長、元国立大学協会会長、元日本学術会議会長)が「『サル化』する人間社会における大学の役割―観光の学への期待」をテーマに、山田良治学長が「変質する人間社会における大学の役割と観光学の射程」をテーマにそれぞれ講演。
このうち山極所長は人間社会が効率を重視する「サル化」していることや、近代の学校教育で「共感力」を使う機会がなくなっていることなどを指摘。
屋久島やコンゴ、ガボンでのフィールドワークや地元の住民との対話を重ねる中で進めてきた環境保護や文化保護を支えるエコツアーの取り組みなどを紹介した上で、「これからは、共感力を生かして、地元の暮らしや環境を学びながら、それぞれに合った観光をデザインしていく『学ぶ観光』の時代だ。その担い手としての大阪観光大に期待したい」とエールを送った。
第2部では基調講演を受けて、「大学改革・観光学の課題と未来に寄せて」と題して、西垣順子・大阪公立大学国際基幹教育機構高等教育研究開発センター教授と宮崎隆志・北海道大学名誉教授がコメントしたほか、山本理事長をコーディネーターに、山田学長、山極所長、西垣教授、宮崎名誉教授をパネリストとしたパネルディスカッションを開催した。
この中で、同大が提唱する「『自由を共に楽しむ力』の育成」のうちの「楽しむ力」や、大学での学びのあり方について議論。山極所長が「観光学は『総合学』であり、今までにないものを未来に向けてデザインしていかなければならない」と指摘した。
このほか基調講演で学力主義や競争至上主義へのアンチテーゼとしての「楽しむ力」と、アンチテーゼを出す主体としての観光関連学教員の役割を指摘した山田学長は、「学生が学ぶきっかけづくり、学生に『火を付ける』には、教員自身がパッションを持っていなければならない」と力を込めて語った。
パネル討論で意見を交わす関係者