観光で稼げる街へ キャナルサイド活性化協会らが連携


アバターがエリアを案内

 天王洲・キャナルサイド活性化協会(東京都品川区)は、新たな都市観光の創造を目指し、パナソニックグループ(大阪府門真市)、跡見学園女子大学(同文京区)と産学協働で観光DXと空間価値向上技術を生かした観光まちづくり事業に注力している。3者は街のにぎわい創出を基点に「稼げる観光まちづくり」を推進。「水辺とアートと観光の街」へと変化している天王洲エリアの今と未来について、関係者に聞いた。

 同協会は、水辺空間の利活用を核とした地域活性化、観光まちづくりを目指し、2015年に創設され、翌16年から本格始動。理事長の三宅康之氏は、「かつて天王洲は、高級なブティックやレストラン、ホテルが立ち並び、遊ぶ街、働く街として栄えたが、魅力的な街が都内各地に現れ、天王洲の存在が忘れ去られてしまった」と振り返る。にぎわいを取り戻すべく開催したキャナルフェスは、開始当初の参加者は千人程度だったが、パナソニックの壁を活用したプロジェクションマッピングなど、各者が持つ技術やノウハウを生かしたイベントが広く認知され、現在では2万から3万人(年4回実施)を集める地域イベントへと成長した。今後について三宅氏は「水運の整備なども進めている。これらの動きをさらに進め、観光DMO登録も目指す」と話す。

 他方、同協会の八幡拓馬氏は課題に言及。(1)複数会場があるものの1会場だけ訪れて終わってしまう来訪者が多い(2)無料のコンテンツが多く、コンテンツの収支が不安定(3)来訪者に子どもがいる層が多く、子ども向けコンテンツが必要(4)案内項目が多岐にわたり運営側の負担が大きい―などを挙げ、「中長期的にはインバウンドも呼びたいが、まずは周辺エリア以外の都内からの集客を増やしたい」との思いを語った。

 イベントが拡大し、街がにぎわう中、さらなる誘客を図るべく、19年から同協会とパナソニックは観光に重点を置いた事業展開、商品開発を開始。21年からは跡見学園女子大学の学生も参加し、観光人材の育成も図る。

最新技術でアートの街に

 今回の事業では、パナソニックグループの観光ソリューションが多くの来場者に触れられ、「アートな街・天王洲」の認知がさらに広がっている。クラウド型の街めぐりガイド「Smart Town Walker」を使った謎解きイベント、アバターを介した遠隔コミュニケーションシステム「AttendStation」による来場者への問い合わせ対応等、次世代の観光ソリューションが天王洲エリア一帯をアート空間へと彩る。同社の内田保氏は「当社は、家電や映像で培った技術の観光分野への活用に注力している。観光振興を目指す地域、当社の地元に関連する大阪・関西万博、IRなどにソリューションを提供していきたい」との展望を明かした。

 

 跡見学園女子大学の篠原靖准教授は、「インバウンドの最大の訪問先である東京の観光の奥行きを深化させることは重要」とした上で、天王洲について「羽田空港からもほど近く、この区間の流動の可能性を支援すべきだ」と分析する。観光業界の俯瞰的な側面からは「既存の枠組みが限界を迎え、人手不足等が顕著な中で、異業種からの参入は必須。パナソニックが観光分野で有する技術を生かし、各産業一体となり『稼ぐ』まちづくりを進めるべきだ」と述べた。

プロジェクションマッピング(上)やドームミストインスタレーションは、集客拠点として周辺の観光消費の要となる

 
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