訪日外国人旅行者2千万人の目標を見据える観光庁は9月30日、学識経験者らを委員とする「2千万人時代に対応した宿泊施設のあり方に関する検討会」の初会合を開いた。目指すべき宿泊施設の受け入れ態勢や実現に向けた課題を議論してもらい、政策や制度に反映させるのが狙い。委員からは、国際的に通用する施設基準創設の是非、地方での宿泊受け入れの充実、多様な形態の宿泊施設の活用など、さまざまな課題が論点として挙げられた。
検討会の委員は、旅館団体や観光関係団体、地方自治体、観光系大学、観光関係の省庁から集めた。座長は立教大学観光学部の平尾彰士特任教授が選出された。宿泊施設へのヒアリング調査、外国の宿泊施設に対する支援制度なども研究。来年2月までに6回の会合を開き、提言をまとめる。
意見交換では、2千万人実現に向けた宿泊受け入れの課題を委員が指摘。日本政府観光局(JNTO)の板谷博道理事は「他の国が導入しているように宿泊施設の施設基準に『3つ星』『5つ星』のような国際的な規格が必要なのかどうか、あるいは独自の制度でいくのか。2千万人時代を見据えた議論が必要ではないか」と課題の1つに挙げた。
現行の国際観光ホテル整備法の登録制度については、外客受け入れを積極的に進める旅館組織、ジャパニーズ・イン・グループの福田金也会長(タートル・イン・日光)が「登録施設と言っても日本人客が中心であるところも多く、実際には外国人の誘客に制度が生かされていないのでは。私たちのような未登録の施設でもホームページなどを活用することで、実際に多くの外国人を集客している」と指摘した。
このほか都市圏や主要観光ルート以外の地方の宿泊施設、低価格で小規模な宿泊施設など、多様な宿泊施設の役割を重視する意見も。「都市と地方のバランス、施設形態の多様性をどう全体像の中でイメージするかが肝心。日本文化を理解してもらうという意味では、日本旅館に宿泊してもらう機会を増やす必要もある」(日本旅行業協会の奥山隆哉理事・事務局長)。
また、日本観光旅館連盟の中村義宗専務理事は「外客の宿泊需要の増加によって旅館・ホテルの経営者の意識は変わってきている。望む、望まないは別として、外客なしでは経営が成り立たないという宿も増えている」と説明。「料金決済の仕組み、外国語会話の通訳サポート、あるいは2次交通の整備など、外客受け入れ全体の中で宿泊施設のあり方を検討する必要があるのでは」と話した。