観光庁は、施設数の減少や人手不足などの課題に直面している日本旅館の経営改革を促進する新たな施策の検討を始めた。有識者や旅館経営者ら15人を委員とする「日本旅館の生産性向上・インバウンド対応の強化等を加速するための新たなビジネスモデルのあり方等に関する検討会」を立ち上げ、1月28日に初会合を開いた。生産性向上や高付加価値化、インバウンド対応などをテーマに議論し、6月をめどに報告書をまとめる。
初会合で観光庁の和田浩一次長は「日本旅館は観光産業の中核にありながら施設数の減少が続いており、経営改革は極めて重要な課題。日本旅館においてもインバウンド対応、生産性向上、人材確保などさまざまな経営課題に対して優れた取り組みがある。これらをより多くの旅館、地域で実行してもらいたい。そのために旅館業界を取り巻く関係者がどのような取り組みを行えば、後押しできるのかを考えていく」と述べた。
政府の観光施策の中長期構想「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016年3月決定)に観光産業の基幹産業化が掲げられたことを踏まえ、観光庁は2017年度に「観光産業革新検討会」で報告書を作成。報告書では、宿泊業の改革が重要課題に挙げられ、収益力の向上やマーケティングの強化、投資の呼び込みなどのために新たなビジネスモデルを構築する必要性が指摘された。
また、宿泊業を含む人手不足が深刻な業種を対象に外国人材の就労を拡大する改正出入国管理法が4月に施行されるが、外国人材の受け入れの前提として、各産業に生産性向上や国内人材の確保への取り組みが求められている。
検討会委員の座長には玉井和博大妻女子大学教授が就いた。会議は冒頭部分以外が非公開。5回ほどの開催を予定している。観光庁は、検討会がまとめる報告書を基に施策を立案する。
◎観光庁「日本旅館の生産性向上・インバウンド対応の強化等を加速するための新たなビジネスモデルのあり方等に関する検討会」委員(敬称略)
座長=玉井和博(大妻女子大学教授)▽井口智裕(雪国観光圏代表理事・HATAGO井仙代表取締役)▽石井恵三AAE Japan代表取締役社長▽大田原博亮(地域経済活性化支援機構地域活性部マネージング・ディレクター)▽金井昭彦(観光庁審議官)▽北嶋緒里恵(リクルートライフスタイル営業統括本部旅行営業統括部グループマネージャー研究員)▽瀧康洋(下呂温泉観光協会会長・水明館代表取締役社長)▽冨田幸宏(湯河原町長)▽永井隆幸(日本旅館協会生産性向上委員長・あらや滔々庵代表取締役)▽松井丈典(静岡キャピタル経営支援部担当部長)▽宮崎知子(陣屋代表取締役女将)▽森口真一郎(JTB常務執行役員個人事業本部国内仕入商品事業部長)▽山崎道徳(日本政府観光局理事)▽山下政樹(笛吹市長)▽吉金嘉洋(日本旅行取締役兼常務執行役員)
観光庁が設置した検討会の初会合