政府が12月18日に閣議決定した補正予算案に、観光庁予算として56億円が計上された。このうち訪日外国人受け入れ環境整備緊急対策として、旅館を中心とする宿泊施設のインバウンド対応の支援に10億円が盛り込まれた。支援対象となる宿泊施設は、全国で千施設程度が見込まれている。
宿泊施設のインバウンド対応支援では、運輸局などを中心に各地方に設置されている「訪日外国人2千万人の受け入れに向けた地方ブロック連絡会」で対象地域を選定。おおむね都道府県ごとに2地域、全国で約100地域を選び、1地域当たり10施設程度を支援する。
選定された地域では、事業者で構成する協議会で「宿泊施設稼働率向上計画」を策定。各宿泊施設が計画に基づいて実施する事業の費用の半額を支援していく。1施設当たりの支援費は100万円程度と見込まれている。
支援対象となる事業は、インバウンドの対応に関する内容であれば特に指定しない。想定される事業例には、Wi—Fi環境の整備、客室やトイレの洋式化、国際テレビ放送設備の整備、館内表示やウェブサイトの多言語化などが挙がっている。
宿泊施設のインバウンド対応とともに、予算10億円の一部は、宿泊施設の空き室情報の提供に関する事業に充てる。訪日外国人の急増に伴い宿泊不足とされる状況の改善を目指す。主要駅などの観光案内所、宿泊業団体のウェブサイトなどでの取り組みを支援。情報の集約、提供の強化を促して宿泊施設のフル稼働につなげる。
地方PRに42億円 地域づくりも支援
補正予算案の観光庁分56億円には、訪日プロモーションや観光地域づくりなどに関する事業費も盛り込まれた。
外国人旅行者の地方への誘客に向けたプロモーションには41億8千万円。桜観光のシーズンである春の誘客に向けて広告宣伝を展開。訪日市場の多様化も念頭に、欧米豪などには地方の歴史、文化の魅力を紹介する。地方空港へのLCC(格安航空会社)などの就航に合わせた観光プロモーションも実施する。
観光地域づくりでは、広域観光周遊ルートと公募で選定した地域を支援する「食と農の観光地域づくり」事業に3億円。東北地方の観光復興では、インバウンド振興に向けたマーケティング調査や人材育成の支援などに1億円を計上した。
受け入れ環境整備緊急対策では、宿泊施設のインバウンド対応など宿泊関係のほかにも、交通に関わる問題の解決に2千万円を充てる。貸切バスの長時間にわたる路上駐車の解消、各種交通機関の乗り換えの利便性向上に関する実証実験を行う。