観光庁、MICE誘致強化で検討委員会立ち上げ


強化委員会の初会合

強化委員会の初会合

 観光庁は11月28日、国際会議や見本市、インセンティブツアー(報奨旅行)などを意味するMICEの誘致、開催を強化するため、有識者を委員とする検討委員会を立ち上げた。日本での国際会議の開催件数は、アジア太平洋地域でのシェアが20年前に比べて大きく低下。委員からは、韓国やシンガポールなどが誘致への取り組みを強化しているのに対し、日本は中長期の視点に立った投資や人材育成に関して具体策が欠如しているなどの問題点が挙げられた。

 ICCA(国際会議協会)の統計によると、アジア太平洋地域の主要国(日本、中国、韓国、シンガポール、豪州)の総開催件数に占める日本のシェアは、1991年には51%だったが、近年では20%台に縮小。要因には他国の経済成長などが挙げられるが、日本の誘致競争力の相対的な低下が懸念されている。

 競合国は、ホテルと一体となった大型の国際会議場や展示場の整備、専門人材の育成などの施策を強化。観光庁が行った海外有識者を対象としたヒアリングでは、「韓国、シンガポール、マレーシアがMICEへの投資を拡大しており、日本との差は開きつつある」との指摘があり、投資などの面ではすでに日本が追う立場にあるとの見方もあった。

 検討委員会では、委員の近浪弘武氏(日本PCO協会代表幹事、日本コンベンションサービス社長)が「重要なのは中長期のビジョン。10、20年のスパンでトップダウンによる先行投資を行う覚悟が必要。韓国、シンガポールとの差はそこではないか。何に投資するかと言えば、人材と施設だ」と訴えた。

 誘致を主導する地域のコンベンションビューロー(CB)の態勢や人材に関する課題も指摘された。国内のCBのMICE担当者は、自治体や民間企業からの出向が多く、一定期間で異動することが多い。専門人材が育ちにくく、国内外の人脈も広がりにくい。

 委員の石井清昭氏(日本コングレス&コンベンションビューロー副会長、ちば国際コンベンションビューロー専務理事)は「CBは自治体の外郭団体だが、MICEの意義や経済効果を自治体が理解し、十分な態勢をとっているかと言えば、必ずしもそうではない。担当者も多くは2、3年で替わってしまう。専門人材の育成、確保に関する施策が必要だ」と指摘した。

 検討委員会の正式名称は、「MICE国際競争力強化委員会」。MICE分野の中でも特に国際会議の誘致に関するソフト面の施策を検討する。自治体やCBのマーケティング戦略の高度化、人材・態勢の強化などを中心に検討し、来年の春までに提言をまとめる。

 MICEの誘致・開催の推進策を有識者で議論する機会は今回が初めてではない。提言の具体化について委員の定保英弥氏(帝国ホテル専務取締役)は「提言をまとめて終わりではなく、アクションこそが大切。民間も、団体も、観光庁も担当者は替わるが、提言を中長期的に実現できるようにすべき」と強調した。

 委員会の他の委員は次の通り(敬称略)。

 西村幸夫(東京大学副学長・教授)=委員長=、石積忠夫(日本展示会協会会長)、川村益之(JTB法人東京社長)、小堀卓(パシフィコ横浜社長)、玉井和博(立教大学観光学部特任教授)、塚本稔(京都市副市長)、中西充(東京都産業労働局長)、生江隆之(日本経済団体連合会観光委員会企画部会長)、松山良一(日本政府観光局理事長)、分部日出男(日本コンベンション事業協会会長)

強化委員会の初会合
強化委員会の初会合
 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒