コロナ対応も施策に反映
政府の2021年度当初予算案で観光庁予算は、20年度比約4割減の408億7千万円となっている。コロナ禍で国際観光旅客税の税収減が見込まれ、他の省庁の観光関連予算に振り替える分を含めて国際観光旅客税を財源とする事業の予算額などが縮小したが、政府が昨年12月に策定した「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に掲げた施策などが盛り込まれている。当初予算案の主な施策を紹介する。
「新たな旅のスタイル」促進事業=5億円
コロナ禍による社会の変化を踏まえ、感染リスクを軽減しつつ、旅行機会の創出、旅行需要の平準化、休暇取得の分散化を促進するため、ワーケーション、ブレジャー、サテライトオフィスなどの環境を整備する。地域の受け入れ態勢の強化、企業への普及啓発、旅行会社の商品造成に向けてモデル事業を実施する。
DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出=8億円
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に向け、最新のデジタル技術を複合的に観光分野に活用する。事業のイメージは、(1)オンラインツアーなどの造成=オンライン空間で観光情報を発信し、消費を促進するとともに、今後のリアルな来訪につなげる(2)新しいコンテンツ・価値の創出=自律走行技術、高精度位置認識技術、AR(拡張現実)などを活用したサービスを提供する(3)観光地経営の変革=取得データを瞬時に活用する技術で収益向上や混雑緩和を実現する。予算成立に先行し、モデル事業の実施団体を選定中。
新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化等=22億3千円
地方での消費拡大に向け、ウィズコロナ時代に対応した付加価値の高い体験型コンテンツを提供する。内訳は、アドベンチャーツーリズム(=AT、自然、文化、アクティビティの体験型観光)のモデルツアーの造成などに12億円。世界レベルの宿泊施設の誘致・整備促進(世界的なホテルブランドと自治体のマッチング、宿泊施設に対する研修プログラムの提供など)に3億円。この他に、城泊・寺泊などのコンテンツを開発する。
国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業=10億5千万円
外国人観光客の長期滞在や消費拡大が期待されるスノーリゾートの環境整備やコンテンツ造成を支援する継続事業。地域で策定した事業計画に基づいてDMO、民間事業者などを対象に事業費の2分の1を補助する。
観光地域づくり法人(DMO)の改革=5億4千万円
地域の幅広い関係者が参画し、自立的な経営が確保されているDMOの競争力を強化するため、次の定額補助を実施する。(1)投資戦略やビジネスモデルを確立するための外部専門人材の登用(上限1500万円)(2)派遣や視察、研修などによる中核人材の育成(上限500万円)(3)安定的な財源の確保のための自主財源(地方税)導入に向けた関係者の合意形成(上限200万円)。
広域周遊観光促進のための観光地域支援事業=7億7千万円
コロナ禍を踏まえ、登録DMOを中心に地域一体で取り組む「新たな旅のスタイル」に対応した戦略策定、滞在コンテンツの充実、受け入れ環境整備、プロモーションに補助金を交付する。
国立公園のインバウンドに向けた環境整備(国際観光旅客税充当の環境省事業)=49億6千万円
国立公園の滞在環境を向上させるため、廃屋の撤去、既存施設のリノベーション、眺望景観の改善などを進める。自然体験のコンテンツ造成や情報提供の多言語化にも取り組む。ウィズコロナ時代に対応し、国立公園の滞在環境を生かしたワーケーションの受け入れ事業も支援する。
公共交通利用環境の革新等=12億4千万円
公共交通事業者、旅客施設の設置管理者などの多言語対応、Wi―Fi環境の整備、キャッシュレス決済対応、非常用電源装置の確保、2次交通の創出などをセットで支援する補助事業。新たに、車両内の抗菌・抗ウイルス対策、旅客施設の衛生対策など感染症予防を支援メニューに追加する。
ICT等を活用した多言語対応等による観光地の「まちあるき」の満足度向上=10億4千万円
散策を楽しめるよう観光地の一体的な整備に補助金を交付する継続事業。「まちなかの周遊機能の強化(まるごとインバウンド対応)」の支援メニューには、ワーケーションの環境整備、免税店の電子化対応、混雑対策の推進などを追加している。
戦略的な訪日プロモーションの実施=73億7千万円
コロナ禍を踏まえ、訪日旅行の安全、安心に関わる正確な情報を発信するほか、デジタルマーケティングを活用して旅行需要の変化に適応したプロモーションを実施する。コロナ収束後には、近隣諸国から訪日観光の回復が見込まれるため、アジア市場のリピーター層を対象にしたキャンペーンを展開する。
訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業=33億8千万円
宿泊施設のインバウンド対応やバリアフリー化、外国人観光案内所の機能強化などに補助金を交付する継続事業。宿泊施設や外国人観光案内所への補助メニューには感染症対策として、混雑状況の「見える化」、非接触型のチェックイン・キーレスシステムの導入、非接触型決済の環境整備などを追加した。