観光白書、訪日増加「日本経済にインパクト」 他業種、景況感に波及


 2018年版「観光白書」は、近年の訪日外国人旅行者の増加がもたらす、旅行消費額にとどまらない、日本経済への影響を検証した。宿泊業の建築投資の増加のほか、各業種の売上高に占める訪日外国人のシェア上昇、訪日観光をきっかけとした越境EC(電子商取引)の創出などを挙げ、「観光が日本経済に与えるインパクトは確実に高まっている」と指摘した。

 各業種の売上高に占める訪日外国人のシェアを試算。13年から17年への変化では、飲食産業で1.3%から3.5%に、鉄道業では1.1%から3.1%に、医薬品・化粧品小売業では1.0%から6.5%に拡大した。

 訪日外国人のシェア上昇に伴いインバウンド対応の投資が増加。観光白書は、12年1月から18年4月までの情報から、宿泊業以外の業種による国内での設備投資、工場建設などの代表的な投資案件53件を紹介している。

 また、観光白書は、訪日観光をきっかけとした越境ECによる日本製品の購買規模(17年)を訪日客数の上位5カ国・地域(中国、韓国、台湾、香港、米国)の合計で約6300億円と推計した。観光庁が上位5カ国・地域を対象に実施したアンケート調査で、越境ECでの日本製品の購買は「自身の訪日観光がきっかけとなった」と回答した割合が3~4割に達した結果を基に試算した。

 訪日外国人増加の影響がさまざまな業種の売上高、投資に波及するようになった結果、観光白書は、インバウンドが「景況感の変動に与える影響が高まっている」と指摘した。毎月約2千人に景気の現状や先行きを聞く内閣府の「景気ウォッチャー調査」に寄せられたコメントを分析。景気の改善や悪化の判断理由にインバウンドを挙げる人は14年後半から急速に増加。訪日外国人の買い物消費が拡大した15年には、景気回復の理由としてインバウンドを挙げた人の割合が7%程度に達する月もあった。

 観光白書は、訪日外国人、さらに日本人の旅行消費額を含めて、観光が日本経済に与える影響を分析した。国際的な基準で算出する日本の「観光GDP」は、12年には約8兆5千億円だったが、16年には約10兆5千億円に拡大。12年から16年までに日本の名目GDPが約43兆円増加する中で、観光GDPは約2兆円の増加となっており、「近年の経済成長に重要な役割を果たしている」と指摘した。

 観光庁観光戦略課観光統計調査室の赤井久宣室長は「観光は近年のインバウンドの増加で、訪日旅行消費額にとどまらず、投資、輸出、景況感の形成などに幅広く影響するようになった。日本経済における存在感が急速に高まっている。GDPの成長率にも観光が貢献するなど、観光は日本経済の主要な成長エンジンに変化しつつある」と解説した。

 一方で観光庁は、日本のインバウンド消費の対名目GDP比は、欧米豪やアジアの一部の国々を下回っており、20年の訪日外国人旅行者数4千万人、消費額8兆円などの目標達成に向けてさらに高次元の観光施策が必要と強調した。

 
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