今年の訪日外客数は、年間1300万人前後に達する見通しになった。観光庁、日本政府観光局(JNTO)が10月までの統計などを基に予想した水準だ。初めて1千万人を超えた昨年の1036万4千人から3割近い伸び。中国や東南アジアが大幅に増加し、台湾が好調を持続、韓国も客船事故などの影響から回復している。円安を背景に、査証(ビザ)緩和やプロモーションなどの施策が奏功している。
JNTOが11月19日に発表した10月の訪日外客数(推計値)は、前年同月比37.0%増の127万2千人で、10月としてだけでなく、1カ月当たりの客数として過去最高を記録した。1〜10月の累計は、前年同期比27.1%増の1100万9千人になった。
訪日市場の好調要因について、観光庁の久保成人長官は、11月19日の専門紙向け定例会見で(1)アジアの経済成長や円安傾向など、市場拡大に有利な環境(2)オリンピック・パラリンピックの東京開催決定、富岡製糸場の世界遺産登録など、日本への注目度の上昇(3)政府一体で取り組むビザ緩和や免税制度改正などの成果(4)訪日プロモーションの効果—を挙げた。
市場別では、10月の訪日外客数が主要な訪日市場18国.地域のうちロシアを除くすべての市場で過去最高。10月までの累計では、中国、台湾、タイ、マレーシア、ベトナムがすでに昨年の年間値を上回っている。
中国は1〜10月累計が80.3%増の201万1800人。昨年後半から日中関係悪化の影響が薄れ、訪日客数が増加傾向にある。10月は、国慶節休暇の旅行が好調で84.0%増の22万3300人になった。
東南アジアは、昨年7月のタイ、マレーシアへのビザ免除などで訪日客が増加。1〜10月累計ではタイが48.2%増の51万3300人、マレーシアが49.8%増の18万2500人など。
台湾は1〜10月累計で26.4%増の238万1200人。10月まででは構成比で最大の訪日市場になっている。13年2月から21カ月連続で各月の最高記録を更新した。
韓国は1〜10月累計で6.8%増の224万5400人。放射能への警戒感が薄れたところに客船の事故が発生するなど、訪日旅行需要が低迷していたが、夏ごろから回復をみせ、10月は57.7%増の24万9600人と過去最高だった。
他の市場の1〜10月累計は、米国が11.9%増の74万4900人、豪州が22.6%増の24万2900人、英国が14.0%増の18万4700人、フランスが14.5%増の15万2300人などとなっている。
11月の市場動向に関してもJNTOは、過去最高の訪日客数を記録すると予想。要因に(1)円安傾向の継続による訪日旅行の割安感の浸透(2)中国発大型クルーズ船の寄港(3)消費税免税制度の拡充(4)紅葉の魅力を訴求した訪日プロモーションの効果—を挙げている。