景気悪化や金融危機などで観光業界も厳しい経営環境に置かれているが、政府が10月30日に打ち出した「追加経済対策」(生活対策)の効果を期待する声が上がっている。高速道路料金の値下げはマイカーによる旅行が増え、生活支援定額給付金は旅行費用に回されるかもしれない。また、中小企業に対しては資金繰りが円滑に行われるよう支援する方向で、資金繰りに悩む旅館などにとっては朗報といえそうだ。
追加経済対策は、生活者支援、金融経済の安定強化、地方支援──が3本柱になっている。いずれも観光業界と密接にかかわる分野であり、早期実施が求められる。対策の中には「観光立国の推進」という文言も盛り込まれ、(1)観光圏の整備促進による魅力ある観光づくりの支援(2)宿泊施設など受け入れ態勢の整備、出入国管理・査証発給体制整備などの観点を含めた訪日査証の見直しによる外客の拡大──に取り組むとした。
追加経済対策の中で、まず生活者支援では総額2兆円の定額給付金が目玉となる。具体的な実施方法はこれからだが、給付額は夫婦と子ども2人の標準家庭で6万円程度が支給される見通し。家計にとってはささやかな臨時収入となる。
給付金が生活必需品の購入や貯蓄に回された場合、新たな消費を喚起する効果は薄くなる。業界は家族旅行などに充ててもらいたい意向だが、そのためには動機付けとなる旅行・宿泊プランが必要。旅行会社などは腕の見せどころだ。
高速道路料金値下げは消費拡大や地域経済活性が狙い。土・日曜、祝日は原則1千円で乗り放題とする。ただし、自動料金収受システム(ETC)利用者に限られる。首都高速や阪神高速など大都市圏の高速道は対象外だが、休日に一定額を割り引く方向で検討する。
「高騰していたガソリン価格も下がり、ドライブにも出やすい状況。値下げが加われば『ちょっと遠出しようか』という気にもなるのでは。給付金支給と合わせ、旅行気運の盛り上がりを期待したい」という声も上がっている。
中小企業へは資金繰り支援が柱で、企業が民間金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が返済を100%保証する「緊急保証制度」を拡充する。責任共有制度の適用はない。保証枠は当初予定の6兆円から20兆円に増やす。制度の対象業種は「(旅館・ホテルを含めた)545業種で、さらに追加する予定」と中小企業庁。すでにスタートしている。
対象業種は一般保証8千万円に加えて、別枠で8千万円(有担保者はさらに2億円)まで保証を受けられる。また、政府系金融機関が直接貸し出す低利融資の枠も3兆円から10兆円に拡大する。特に業況が厳しい事業者については金利の見直しも行う予定。
経済産業局には「中小企業貸し渋り110番」が開設されており、同庁はこの利用も呼びかけている。